1 訴訟関係人のする刑事確定訴訟記録法に基づく保管記録の閲覧請求であっても,関係人の名誉又は生活の平穏を害する行為をする目的でされたなど,権利の濫用に当たる場合は許されない。 2 訴訟関係人がした関係者の身上,経歴等プライバシーに関する部分についての閲覧請求が,当該関係者の名誉又は生活の平穏を害する行為をする目的でされたと認められる相当の理由がある本件事実関係の下では,同請求は,権利の濫用として許されない。
1 訴訟関係人のする刑事確定訴訟記録法に基づく保管記録の閲覧請求が許されない場合 2 訴訟関係人がした閲覧請求が,関係者の名誉又は生活の平穏を害する行為をする目的でされたと認められる相当の理由があり,権利の濫用として許されないとされた事例
(1,2につき)刑事確定訴訟記録法4条1項,刑事確定訴訟記録法4条2項,刑事確定訴訟記録法6条,刑訴法53条
判旨
前科等にかかわる事実は、個人のプライバシーとして保護されるべきであり、法律上の理由なく公開されない法的利益を有する。市区町村長が警察官の照会に対し、漫然と前科等のすべてを報告することは、公権力の行使として違法となる。
問題の所在(論点)
市区町村長が、弁護士法23条の2に基づく照会に応じて前科等のすべてを回答した行為が、公権力の行使として違法(国家賠償法1条1項)となるか。特に、前科等が個人のプライバシーとして保護される範囲と、行政庁の回答義務の限界が問題となる。
規範
前科及び犯罪経歴(以下「前科等」)は、個人の名誉・信用に直結する秘密であり、法律上の根拠なくみだりに公開されないという法的保護に値する利益を有する。市区町村長が弁護士法23条の2に基づく照会に応じる場合であっても、照会事項が個人の基本的人権を侵すおそれがあるときは、照会の必要性と情報の性質、開示による不利益を比較衡量し、慎重に判断すべきである。特に前科等の全てを漫然と報告することは、権限の範囲を逸脱し、公権力の行使として違法となる。
事件番号: 平成24(し)25 / 裁判年月日: 平成24年6月28日 / 結論: その他
刑事確定訴訟記録法に基づく判決書の閲覧請求について,「プライバシー部分を除く」とする限定の趣旨を申立人に確認することなく,閲覧の範囲を検討しないまま,民事裁判においてその内容が明らかにされるおそれがあるというだけの理由で同法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に該当するとして判決書全部の閲覧を不許可とした保管検察官の処分…
重要事実
弁護士が、民事訴訟(労働契約解除に伴う損害賠償請求)の証拠とするため、弁護士法23条の2に基づき、特定の者の前科等について市区町村長に照会を行った。これに対し、市区町村長は、前科等のすべてをそのまま報告した。当該人物は、前科等をみだりに公開されたことにより精神的苦痛を受けたとして、国家賠償請求を提起した。
あてはめ
前科等は、更生を妨げられないという利益を含め、個人の名誉・信用に深く関わる。本件において、照会された内容は労働基準法違反等の経歴を含む広範なものであったが、市区町村長は照会目的の正当性や必要性を十分に吟味せず、また、特定の罪種に限定するなどの配慮も行わず、漫然とすべての前科等を報告した。これは、開示によって得られる公共の利益よりも、本人が被る不利益が著しく大きいといえる。
結論
市区町村長が漫然と前科等のすべてを報告した行為は、職務上の注意義務に違反し、公権力の行使として違法である。したがって、国家賠償法1条1項に基づく賠償責任が認められる。
実務上の射程
プライバシー権(13条)を根拠とする法的利益を認めた重要判例。行政実務における照会への回答のみならず、私人間における情報の開示についても、情報の機微性と開示の必要性の比較衡量という枠組みが応用される。答案上は、公権力による情報の取扱いが「正当な理由」を欠くか否かの判断基準として用いる。
事件番号: 平成27(し)401 / 裁判年月日: 平成27年12月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】刑事確定訴訟記録法4条2項5号の閲覧制限事由の該否は、当該情報を公開することで関係人の名誉や生活の平穏を著しく害するおそれがあるか、及び裁判の公正を担保するために公開が必要な範囲を総合的に判断して決定すべきである。 第1 事案の概要:閲覧請求人は、放射性物質に汚染された木材チップの廃棄事件(廃棄物…
事件番号: 平成27(し)428 / 裁判年月日: 平成27年10月27日 / 結論: 棄却
刑事確定訴訟記録法4条1項ただし書,刑訴法53条1項ただし書にいう「検察庁の事務に支障のあるとき」には,保管記録を請求者に閲覧させることによって,その保管記録に係る事件と関連する他の事件の捜査や公判に不当な影響を及ぼすおそれがある場合が含まれる。
事件番号: 平成13(し)299 / 裁判年月日: 平成14年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事確定訴訟記録法に基づき検察官が行う記録の閲覧等に関する処分は、同法8条1項にいう「閲覧に関する処分」に該当しないため、刑事訴訟法430条1項による準抗告の対象とならない。 第1 事案の概要:本件において、申立人は検察官に対し刑事確定訴訟記録の閲覧を求めたが、検察官はこれに対し何らかの拒否または…
事件番号: 平成4(し)114 / 裁判年月日: 平成4年12月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法82条2項但書は、刑事確定訴訟記録の閲覧を権利として要求できることまでを認めたものではない。したがって、閲覧の制限を定めた刑事確定訴訟記録法等の規定は同条に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人が、刑事確定訴訟記録法4条2項及び刑事訴訟法53条3項に基づき刑事確定訴訟記録の閲覧を求めたが、認め…