監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,面会交流の頻度等につき1箇月に2回,土曜日又は日曜日に1回につき6時間とする旨定められているが,子の引渡しの方法については何ら定められていないなど判示の事情の下では,監護親がすべき給付が十分に特定されているとはいえず,上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることはできない。
監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判に基づき間接強制決定をすることができないとされた事例
民法766条1項,家事審判法(平成23年法律第53号による廃止前のもの)15条,家事事件手続法75条,民事執行法172条1項
判旨
面会交流を命ずる審判に基づき間接強制をするには、日時、頻度、時間の長さ、子の引渡し方法等が具体的に定められ、給付が特定されている必要がある。本件では、面会交流の頻度や時間は定められていたものの、子の引渡し方法が定められておらず、特定を欠くため間接強制は認められない。
問題の所在(論点)
面会交流を命ずる審判に基づき間接強制の決定をするために必要とされる、給付(義務内容)の特定の程度が問題となる。
規範
監護親に対し面会交流を許すよう命ずる審判は、性質上、間接強制をすることが可能である。ただし、間接強制決定をするためには、審判において面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど、監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえることが必要である。
重要事実
未成年者の父(抗告人)と母(相手方)の離婚後、家庭裁判所は、母に対し、父と長男・二男が「1箇月に2回、土曜日又は日曜日に、1回につき6時間」面会交流することを許さなければならない旨の審判をした。しかし、審判確定後に面会交流が実施されなくなったため、父は当該審判を債務名義として間接強制を申し立てた。なお、当該審判には、子の引渡し方法に関する具体的な定めは含まれていなかった。
事件番号: 平成24(許)48 / 裁判年月日: 平成25年3月28日 / 結論: 棄却
1 監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は,上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができる。 2 監護親…
あてはめ
本件審判の条項は、面会交流の頻度(1箇月に2回、土日)や各回の時間の長さ(6時間)については定めを置いている。しかし、面会交流を実施する上で不可欠な要素である、長男及び二男を具体的にどこで、どのように引き渡すべきかという「引渡しの方法」については何ら定められていない。したがって、相手方がすべき義務の内容が十分に特定されているとはいえない。
結論
本件審判に基づき間接強制決定をすることはできないため、抗告を棄却する。
実務上の射程
面会交流の義務を間接強制で実現したい場合には、審判等の債務名義作成段階で、場所・時間のみならず具体的な「引渡し方法」まで詳細に規定する必要があることを示した実務上極めて重要な判例である。答案上は、債務名義の執行力の有無(特定性)を論じる際の基準として引用する。
事件番号: 平成24(許)47 / 裁判年月日: 平成25年3月28日 / 結論: 棄却
非監護親と監護親との間において非監護親と子が面会交流をすることを定める調停が成立した場合において,調停調書に次の(1),(2)のとおり定められているなど判示の事情の下では,監護親がすべき給付が十分に特定されているとはいえず,上記調停調書に基づき監護親に対し間接強制決定をすることはできない。 (1) 面会交流は,2箇月に…
事件番号: 令和3(許)8 / 裁判年月日: 令和4年6月21日 / 結論: 棄却
ハーグ条約実施法134条に基づき子の返還を命ずる終局決定を債務名義としてされた間接強制の方法による子の返還の強制執行の申立ては、当該申立ての後に当該終局決定を債務名義とする子の返還の代替執行により子の返還が完了したという事実関係の下においては、不適法である。
事件番号: 令和3(許)17 / 裁判年月日: 令和4年11月30日 / 結論: 破棄自判
婚姻中の父母のうち父に対して子を母に引き渡すよう命ずる審判の確定から約2か月の間に2回にわたり子が母に引き渡されることを拒絶する言動をしたにとどまるなど判示の事実関係の下では、子の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ子の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる父の行為を具体的に想定することは困難である…
事件番号: 平成30(許)13 / 裁判年月日: 平成31年4月26日 / 結論: 破棄自判
婚姻中の父母のうち父に対して長男A,二男B及び長女Cを母に引き渡すよう命ずる審判を債務名義とするAの引渡しについての間接強制の申立ては,次の(1),(2)など判示の事情の下では,権利の濫用に当たる。 (1) 上記審判を債務名義とする引渡執行の際,B及びCが母に引き渡されたにもかかわらず,A(当時9歳3箇月)については,…