非監護親と監護親との間において非監護親と子が面会交流をすることを定める調停が成立した場合において,調停調書に次の(1),(2)のとおり定められているなど判示の事情の下では,監護親がすべき給付が十分に特定されているとはいえず,上記調停調書に基づき監護親に対し間接強制決定をすることはできない。 (1) 面会交流は,2箇月に1回程度,原則として第3土曜日の翌日に,半日程度(原則として午前11時から午後5時まで)とするが,最初は1時間程度から始めることとし,子の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする。 (2) 監護親は,上記(1)の面会交流の開始時に所定の喫茶店の前で子を非監護親に会わせ,非監護親は終了時間に同場所において子を監護親に引き渡すことを当面の原則とするが,面会交流の具体的な日時,場所,方法等は,子の福祉に慎重に配慮して,監護親と非監護親間で協議して定める。
非監護親と子が面会交流をすることを定める調停調書に基づき間接強制決定をすることができないとされた事例
民法766条1項,家事審判法(平成23年法律第53号による廃止前のもの)15条,家事審判法(平成23年法律第53号による廃止前のもの)21条1項ただし書,家事事件手続法75条,家事事件手続法268条1項,民事執行法172条1項
判旨
面会交流を命ずる債務名義に基づき間接強制をするためには、債務名義において、面会交流の日時又は頻度、時間の長さ、子の引渡方法等が具体的に定められ、監護親がすべき給付が特定されていなければならない。
問題の所在(論点)
面会交流義務のような不代替的作為義務につき、間接強制を認めるために必要な債務名義の特定の程度が問題となる。
規範
非監護親と子との面会交流を定める調停条項に基づき間接強制決定をするためには、調停調書に面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど、監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないことを要する。ただし、間接強制を許さない旨の合意が存在するなどの特段の事情がある場合はこの限りではない。
事件番号: 平成24(許)48 / 裁判年月日: 平成25年3月28日 / 結論: 棄却
1 監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は,上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができる。 2 監護親…
重要事実
抗告人(父)と相手方(母)は、長男との面会交流につき「2箇月に1回程度、原則として第3土曜日の翌日に、半日程度(原則11時〜17時)」「最初は1時間程度から始め、様子を見ながら徐々に延ばす」「具体的な日時、場所、方法等は協議して定める」旨の調停を成立させた。その後、面会交流が実現しなくなったため、抗告人は当該調停調書に基づき間接強制を申し立てた。
あてはめ
本件調停条項は、頻度につき「2箇月に1回程度」とし、時間も「半日程度」としつつ「徐々に時間を延ばす」とするなど、必ずしも一義的に特定されていない。また、具体的な日時等について「協議して定める」としている。これらに照らせば、本件調停条項は面会交流の大枠を定めるにとどまり、具体的な内容は協議を予定しているものである。したがって、相手方がすべき給付が十分に特定されているとはいえない。
結論
本件調停調書に基づき間接強制決定をすることはできない。抗告棄却。
実務上の射程
面会交流は子の利益が最優先されるため(民法766条1項)、本来は柔軟な協力が望ましいが、間接強制という強制執行の手続きに乗せる以上、債務者の不利益を考慮し、明確な基準(給付の特定)が必要であることを示した。答案上は、日時・時間・引渡方法の3要素の具体性をチェックする基準として活用する。
事件番号: 平成24(許)41 / 裁判年月日: 平成25年3月28日 / 結論: 棄却
監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,面会交流の頻度等につき1箇月に2回,土曜日又は日曜日に1回につき6時間とする旨定められているが,子の引渡しの方法については何ら定められていないなど判示の事情の下では,監護親がすべき給付が十分に特定されているとはいえず,上記審判に基づ…
事件番号: 平成30(許)13 / 裁判年月日: 平成31年4月26日 / 結論: 破棄自判
婚姻中の父母のうち父に対して長男A,二男B及び長女Cを母に引き渡すよう命ずる審判を債務名義とするAの引渡しについての間接強制の申立ては,次の(1),(2)など判示の事情の下では,権利の濫用に当たる。 (1) 上記審判を債務名義とする引渡執行の際,B及びCが母に引き渡されたにもかかわらず,A(当時9歳3箇月)については,…
事件番号: 令和3(許)17 / 裁判年月日: 令和4年11月30日 / 結論: 破棄自判
婚姻中の父母のうち父に対して子を母に引き渡すよう命ずる審判の確定から約2か月の間に2回にわたり子が母に引き渡されることを拒絶する言動をしたにとどまるなど判示の事実関係の下では、子の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ子の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる父の行為を具体的に想定することは困難である…
事件番号: 令和3(許)8 / 裁判年月日: 令和4年6月21日 / 結論: 棄却
ハーグ条約実施法134条に基づき子の返還を命ずる終局決定を債務名義としてされた間接強制の方法による子の返還の強制執行の申立ては、当該申立ての後に当該終局決定を債務名義とする子の返還の代替執行により子の返還が完了したという事実関係の下においては、不適法である。