ハーグ条約実施法134条に基づき子の返還を命ずる終局決定を債務名義としてされた間接強制の方法による子の返還の強制執行の申立ては、当該申立ての後に当該終局決定を債務名義とする子の返還の代替執行により子の返還が完了したという事実関係の下においては、不適法である。
ハーグ条約実施法134条に基づく間接強制の方法による子の返還の強制執行の申立てが不適法であるとされた事例
国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(ハーグ条約実施法)134条、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(ハーグ条約実施法)136条、民事執行法172条1項
判旨
ハーグ条約実施法に基づく子の返還を命ずる終局決定を債務名義とする間接強制の申立て後、代替執行により子の返還が完了した場合には、強制執行の目的を達したことにより当該申立ては不適法となる。
問題の所在(論点)
ハーグ条約実施法に基づく子の返還の間接強制申立て後、代替執行により返還が完了した場合、当該間接強制申立ての適法性にいかなる影響を及ぼすか。また、常居所地国の監護裁判を理由に執行を拒絶できるか。
規範
強制執行の手続において、申立て後に代替執行等の他の執行方法によって執行の目的が達せられた場合には、当該執行申立ては目的を喪失し不適法となる。また、返還決定後の外国での監護裁判の存在のみを理由に権利濫用として執行を拒むことは、ハーグ条約17条および実施法28条3項の趣旨に照らし慎重な検討を要する。
重要事実
抗告人(妻)は、相手方(夫)に対し、子らのフランスへの返還を命ずる終局決定を債務名義として間接強制を申し立てた。原審は、子らの常居所地国であるフランスの裁判所がした子の監護に関する裁判(確定前)の内容に反することを理由に、権利濫用として申立てを却下した。しかし、本件許可抗告の係属中に、別途申し立てられていた代替執行によって子らの返還が完了した。
事件番号: 平成24(許)41 / 裁判年月日: 平成25年3月28日 / 結論: 棄却
監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,面会交流の頻度等につき1箇月に2回,土曜日又は日曜日に1回につき6時間とする旨定められているが,子の引渡しの方法については何ら定められていないなど判示の事情の下では,監護親がすべき給付が十分に特定されているとはいえず,上記審判に基づ…
あてはめ
本件では、間接強制の申立て後に実施法134条に基づく代替執行が実施され、子らの返還が既に完了している。これにより、債務名義である本件返還決定に係る強制執行の目的は既に達成されたといえる。したがって、間接強制の手続を維持する必要性は消滅し、申立ては不適法なものとなったと解される。補足意見によれば、原審が挙げた「外国の確定前監護裁判との抵触」という理由は、条約17条等が監護の権利に関する決定を返還拒絶の根拠とすることを制限している趣旨に反するおそれがあるが、結論として申立て却下は維持される。
結論
代替執行により子の返還が完了したことで強制執行の目的を達したため、本件間接強制の申立ては不適法であり、却下すべきである。
実務上の射程
間接強制と代替執行が併用される子の引渡し事案において、一方の手段で目的が達せられた場合の具体的帰結(不適法却下)を示した。また、補足意見は、返還決定後の事情変更(外国での監護裁判)を理由とする執行阻止(権利濫用法理の適用)に対し、ハーグ条約の基本理念を重視して否定的な示唆を与えており、実務上の防御活動において重要な指針となる。
事件番号: 令和3(許)17 / 裁判年月日: 令和4年11月30日 / 結論: 破棄自判
婚姻中の父母のうち父に対して子を母に引き渡すよう命ずる審判の確定から約2か月の間に2回にわたり子が母に引き渡されることを拒絶する言動をしたにとどまるなど判示の事実関係の下では、子の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ子の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる父の行為を具体的に想定することは困難である…
事件番号: 平成30(許)13 / 裁判年月日: 平成31年4月26日 / 結論: 破棄自判
婚姻中の父母のうち父に対して長男A,二男B及び長女Cを母に引き渡すよう命ずる審判を債務名義とするAの引渡しについての間接強制の申立ては,次の(1),(2)など判示の事情の下では,権利の濫用に当たる。 (1) 上記審判を債務名義とする引渡執行の際,B及びCが母に引き渡されたにもかかわらず,A(当時9歳3箇月)については,…
事件番号: 平成24(許)47 / 裁判年月日: 平成25年3月28日 / 結論: 棄却
非監護親と監護親との間において非監護親と子が面会交流をすることを定める調停が成立した場合において,調停調書に次の(1),(2)のとおり定められているなど判示の事情の下では,監護親がすべき給付が十分に特定されているとはいえず,上記調停調書に基づき監護親に対し間接強制決定をすることはできない。 (1) 面会交流は,2箇月に…
事件番号: 平成26(許)17 / 裁判年月日: 平成27年1月22日 / 結論: 棄却
確定判決により干拓地の潮受堤防の排水門を開放すべき義務を負った者が第三者の申立てに基づく仮処分決定により上記排水門を開放してはならない旨の義務を負ったという事情があっても,執行裁判所は上記確定判決に基づき間接強制決定をすることができる。