音楽著作権の管理事業を行う既存の事業者が,その管理する音楽著作物の放送への利用の包括的な許諾につき,ほとんど全ての放送事業者との間で年度ごとの放送事業収入に所定の率を乗じて得られる金額又は所定の金額による使用料の徴収方法を定める利用許諾契約を締結しこれに基づくその徴収をする行為は,次の(1)~(3)など判示の事情の下では,音楽著作物の放送への利用の許諾に係る市場において,独占禁止法2条5項にいう「他の事業者の事業活動を排除」する行為の要件である他の事業者の参入を著しく困難にする効果を有する。 (1) 上記の市場においては,放送事業者にとって,上記管理事業の許可制から登録制への移行後も大部分の音楽著作権につき管理の委託を受けている当該既存の事業者との間で,包括的な許諾による利用許諾契約を締結しないことがおよそ想定し難い状況にあった。 (2) 上記の徴収方法は,当該既存の事業者の管理する音楽著作物の利用割合が使用料の金額の算定に反映されないものであるため,放送事業者が他の事業者に使用料を支払うとその負担すべき使用料の総額が増加するものであった。 (3) 当該既存の事業者による上記行為の継続期間は,7年余に及ぶものであった。
音楽著作権の管理事業者が放送への利用の許諾につき使用料の徴収方法を定めるなどの行為が,独占禁止法2条5項にいう「排除」の要件である他の事業者の参入を著しく困難にする効果を有するとされた事例
(独占禁止法)私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条5項,(独占禁止法)私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律3条,著作権等管理事業法2条,著作権等管理事業法3条
判旨
独占禁止法2条5項の「排除」とは、正常な競争手段の範囲を逸脱する人為性を有し、他事業者の参入等を著しく困難にする効果を指す。圧倒的シェアを有する管理事業者が、利用割合を反映させない包括徴収制を採用し、他社利用時に追加負担を強いることは、代替的性格を持つ楽曲市場において他社排除の効果を有する。
問題の所在(論点)
音楽著作権管理事業者が、利用割合を考慮しない包括徴収方式により使用料を徴収する行為が、独占禁止法2条5項の「他の事業者の事業活動を排除」に該当するか。
規範
「他の事業者の事業活動を排除」する行為(独占禁止法2条5項)とは、自らの市場支配力の形成・維持・強化の観点から見て、正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有し、他の事業者の市場への参入を著しく困難にするなどの効果を有するものをいう。その該非は、市場の状況、行為者の地位、競争条件の差異、商品の特性、行為態様、継続期間等を総合的に考慮して判断する。
重要事実
JASRAC(参加人)は音楽著作権管理市場で事実上の独占状態にあった。JASRACは、放送事業者との間で、放送事業収入に一定率を乗じる「包括徴収方式」を採用。この方式では、他社(被上告人等)の管理楽曲を利用してもJASRACへの支払額は減らず、他社への支払いが純増する構造であった。被上告人は放送市場に参入したが、放送事業者はコスト増を嫌い被上告人の管理楽曲の利用を回避。被上告人の徴収額は僅少にとどまり、委託契約の解除も発生した。
あてはめ
まず、JASRACは大部分の楽曲を管理しており、放送事業者が契約を回避することは困難である。また、楽曲は放送番組の目的等に応じて代替可能な性格を持つ。次に、本件の包括徴収制の下では、他社楽曲の利用が放送使用料の追加負担(二重払い)を招くため、経済合理性から他社楽曲の利用が抑制される。実際に、放送事業者が他社楽曲を回避する行動が確認されており、7年以上の長期間にわたり参入を著しく困難にする効果が認められる。さらに、個別徴収を選択すると著しく多額になる料金設定により包括徴収を余儀なくさせている点も併せれば、正常な競争手段を逸脱する人為性も認められる。
結論
本件行為は、他の事業者の市場参入を著しく困難にする効果を有し、特段の事情がない限り「他の事業者の事業活動を排除」するものとして私的独占に該当し得る。
実務上の射程
排除型私的独占の判断枠組みを示したリーディングケース。市場支配的地位にある者が、形式的には中立な契約条件(一律料金等)を提示しても、他社との競争において実質的な追加負担を強いる構造(「二重払いの強制」)を作る場合は排除に該当する可能性がある。答案では「効果」の認定において、商品の代替性と利用者の経済合理性をリンクさせて論じる際に有用である。
事件番号: 昭和26(オ)665 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 棄却
一 原判決認定のような事実関係のもとでは、原判示の映画劇場賃借は、原判示の取引分野における映画興行上の競争を実質的に制限するものと解すべきである。 二 公正取引委員会が、審判開始決定書記載の事実を訂正しないで、これと多少異る違反事実を認定しても、事実の同一性が害せられず、且被審人の防禦の機会をとざしていない限り、違法で…