一、育児用粉ミルクの元売業者が、商品の価格維持を図るため、取引先の販売業者に対して一定の再販売価格を指示し、販売業者がこれを守らなかつたときは元売業者から交付するリベートを削減しあるいは取引を打ち切るなどの不利益を課することを内容とする判示のようないわゆる再販売価格維持行為を行うことは、昭和二八年公正取引委員会告示第一一号(不公正な取引方法)の八に定める拘束条件付取引にあたる。 二、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律二四条の二第一項の規定は、いわゆる再販売価格維持行為が相手方たる販売業者間の自由な競争を阻害するおそれのあるものであるかぎり不公正な取引方法として違法とされるべきことを前提として、ただ、販売業者の不当廉売等により商品の商標に対する信用が段損されあるいは他の販売業者の利益が不当に害されることなどを防止するため、同条一、二項所定の要件のもとにおいて、公正取引委員会が諸般の事情を考慮し価格維持を許すのが相当であると認めて指定した商品についてのみ、例外的にその再販売価格維持行為を違法としないこととしたものであつて、販売業者間の自由な競争の確保を目的とする昭和二八年公正取引委員会告示第一一号(不公正な取計方法)の八とは経済政策上の観点を異にする規定である。 三、商品が不当廉売等に供されることがあるとしても、その商品につき私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律二四条の二による公正取引委員会の指定を受けることなく、かつ、すべての販売業者に対して一般的に、いわゆる再販売価格維持行為を行うことは、昭和二八年公正取引委員会告示第一一号(不公正な取引方法)の八にいう正当な理由を有しない。
一、いわゆる再販売価格維持行為が昭和二八年公正取引委員会告示第一一号(不公正な取引方法)の入に定める拘束条件付取引にあたるとされた事例 二、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律二四条の二第一項の規定の趣旨 三、いわゆる再販売価格維持行為が商品の不当廉売等を防止するために行われる場合と昭和二八年公正取引委員会告示第一一号(不公正な取引方法)の八にいう正当な理由の有無
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条7項4号,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律24条の2,昭和28年公正取引委員会告示11号8項
判旨
再販売価格維持行為における「拘束条件付取引」の該当性と、それにかかる「正当な理由」の意義について示し、事業経営上の必要性のみでは違法性を阻却しないと判示しました。
問題の所在(論点)
再販売価格維持行為が「拘束条件付取引」に該当するか。また、不当廉売対策等の事業経営上の必要性が「正当な理由」として認められるか。
規範
不公正な取引方法(法2条9項。本件では当時の一般指定8号)の不当性は、相手方の事業活動における自由な競争を阻害することにある。したがって、「正当な理由」とは、専ら公正な競争秩序維持の見地から、当該拘束条件が相手方の自由な競争を阻害するおそれがないことをいう。単に事業経営上の必要性や合理性があるだけでは「正当な理由」に当たらない。また、再販売価格維持行為(法24条の2)の適用除外指定を受けていない以上、事実上その要件に適合していても直ちに正当化されない。
重要事実
育児用粉ミルクの総発売元である上告人は、新商品「FII」の発売に際し、価格維持を図るため、(1)指定価格遵守を誓約し登録した販売業者とのみ取引する、(2)価格未遵守の卸売業者へのリベートを大幅削減する、(3)価格未遵守の小売業者の登録を取り消す、という販売方策を決定・実施した。これに対し公正取引委員会は、不公正な取引方法(拘束条件付取引)に該当するとして排除措置命令を出した。
あてはめ
上告人の行為は、卸売業者等に対し、第三者との取引価格や取引先を制限し、違反に不利益を課すことで事実上指定価格を強制するものであるから、拘束条件付取引に該当する。上告人は、ブランド信用毀損を防ぐための不当廉売対策として事業経営上の合理性を主張するが、これは公正な競争秩序維持の見地から競争阻害性が否定されるものではない。法定の適用除外指定を受けていない以上、すべての販売業者に対し制度的に再販売価格を維持させる行為は「正当な理由」を欠くといえる。
結論
上告人の行為は不公正な取引方法に該当し、違法である。排除措置を是認した原判決に違法はない。
実務上の射程
再販売価格維持行為(垂直的制限)の違法性判断において、ブランド保護やフリーライダー対策といった「事業経営上の必要性」は、それ自体では「正当な理由」にならないことを明確にしている。答案上は、競争秩序の観点から「競争阻害性」の有無を厳格に検討すべきとする基準として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)261 / 裁判年月日: 昭和36年1月26日 / 結論: 棄却
一 公正取引委員会が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二〇条(昭和二八年法律第二五九号による改正前)により不公正な競争方法であるかどうかを認定するにあたつては、単にその行為の外観にのみとらわれることなく、かかる行為の行われた客観的情勢をも勘案し、その行為の意図とするところをも考慮すべきである。 二 新聞社の…