公正取引委員会が、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定に違反する行為があると認めた場合に、違反行為をした者に対し、勧告審決の手続により勧告するか審判審決の手続により審判を開始するかは、その裁量に任されている。
勧告審決と審判審決の手続の選択と公正取引委員会の裁量権
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律48条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律49条
判旨
勧告審決の成立要件は名宛人の自由な意思に基づく勧告応諾の意思表示にあり、公正取引委員会による違反行為の存在の認定は要件ではない。したがって、違反行為の不存在は勧告審決の取消事由にはならず、また勧告審決が裁判所に対する事実上の拘束力を持つこともない。
問題の所在(論点)
勧告審決の成立において公正取引委員会による「違反行為の認定」は要件となるか。また、違反行為の不存在を理由に勧告審決を取り消すことができるか。あわせて、勧告審決が裁判所を拘束する法的効力を有するか。
規範
勧告審決は、法の目的を簡易迅速に実現するため、名宛人の自由な意思に基づく勧告応諾を専らの要件とする。公法上の証拠に基づく違反行為の認定を要件とする審判審決や、自認を要件とする同意審決とは性質を異にする。よって、違反行為の存否は勧告審決の適否に影響せず、違反行為の不存在は取消原因とならない。また、勧告審決には実質的証拠の原則(法80条等)の適用はなく、違反行為の存在につき裁判所を法律上拘束するものでもない(ただし、事実上の推定が働くことは否定されない)。
重要事実
公正取引委員会が、上告人(企業等)の行為を独占禁止法違反と認め排除措置を勧告した。上告人はこの勧告を応諾したため、委員会は審判手続を経ずに勧告審決を行った。しかし、上告人は後に違反行為は存在しなかったと主張し、勧告審決の取消しを求めて提訴した。上告人は、応諾の意思表示に要素の錯誤があったとも主張したが、その事情は動機の錯誤に留まり、表示もされていなかった。
あてはめ
勧告審決制度の趣旨は、応諾がある場合に審判を省略し、簡易に排除措置を確定させる点にある。審決書に記載される「事実」は、排除措置の範囲を特定し一事不再理の効力を画定するためのものに過ぎず、委員会が改めて証拠に基づき認定した事実ではない。本件では上告人が自由な意思で応諾しており、応諾に至る事情は単なる動機であって表示もされていないため、意思表示の錯誤(要素の錯誤)は認められない。したがって、適法な応諾に基づきなされた本件審決において、違反行為の不存在を争うことはできない。
結論
違反行為の不存在は勧告審決の取消事由とならない。また、勧告審決は裁判所を法律上拘束しない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
独占禁止法上の勧告審決制度(現行法の合意制度等と比較される旧制度)の法的性質を明らかにした重要判例である。行政法上の「公法上の合意」に近い性質を持つ処分として整理される。答案上は、審決の拘束力(法80条)の範囲を論じる際や、行政手続における簡易的な紛争解決手段の瑕疵を論じる際の参照軸となる。
事件番号: 昭和46(行ツ)66 / 裁判年月日: 昭和50年11月28日 / 結論: 棄却
一、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律四八条に基づくいわゆる勧告審決は、その名宛人以外の第三者に対し、これを拘束したり、その認定にかかる行為が同法違反の行為であることを確定したり、右審決に基づくその名宛人の行為を正当化したりするなどの法律的影響を及ぼすものではない。 二、外国事業者とわが国内事業者間の商品の継…