一、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律四八条に基づくいわゆる勧告審決は、その名宛人以外の第三者に対し、これを拘束したり、その認定にかかる行為が同法違反の行為であることを確定したり、右審決に基づくその名宛人の行為を正当化したりするなどの法律的影響を及ぼすものではない。 二、外国事業者とわが国内事業者間の商品の継続的販売に関する国際的契約につき、国内事業者に対し契約終了後における競争品の製造販売及び取扱を禁止した条項が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律六条一項に違反するとして、同法四八条に基づき、右契約の一方当事者である国内事業者のみを名宛人として、右違反条項の削除を命ずるいわゆる勧告審決がされた場合、右契約の他方当事者である外国事業者は、右審決が右外国事業者を同法違反の行為をした者と認定していても、また、右国内事業者が右審決に従つて右契約条項の破棄ないし不履行の挙に出ることがあるとしても、それだけでは右審決の取消を訴求する原告適格を有するとはいえない。
一、私的独占の禁止及び公正取引のに関する法律四八条に基づくいわゆる勧告審決のその名宛人以外の第三者に対する効カ 二、国際的契約につき私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律六条一項に違反するとしてされた同法四八条に基づくいわゆる勧告審決の取消訴訟と審決の名宛人とされていない右契約の他方当事者の原告適格
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律6条1項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律7条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律48条,行政事件訴訟法9条
判旨
勧告審決は名宛人の応諾に基づくものであり、名宛人以外の第三者に対して違反行為を確定したり行為を正当化したりする法律上の影響を及ぼさないため、特段の事情のない限り、当該第三者は審決の取消しを求める原告適格を有しない。
問題の所在(論点)
独占禁止法に基づく勧告審決の取消訴訟において、審決の名宛人ではない契約の相手方(第三者)が、行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益を有する者」として原告適格を有するか。
規範
行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。勧告審決は、名宛人の自由な意思に基づく応諾を基礎とするものであり、第三者に対する関係では違反行為を確定する効果を持たず、また名宛人の行為を正当化する法律的影響も及ぼさない。したがって、名宛人以外の第三者は、特段の事情のない限り、当該審決によって権利又は法律上の利益を害されることはない。
重要事実
デンマーク法人である上告会社は、日本のD製薬との間で継続的販売契約(本件契約)を締結していた。本件契約には、契約終了後の競争品の製造販売禁止条項が含まれていた。公正取引委員会は、当該条項が独占禁止法6条1項に違反するとしてD製薬に勧告を行い、応諾したD製薬に対し条項の削除を命じる勧告審決をした。上告会社は、本件契約の当事者として権利を侵害されたと主張し、本件審決の取消しを求めて提訴した。
あてはめ
本件審決はD製薬に対してのみ排除措置を命じたものであり、上告会社は名宛人ではない第三者にすぎない。勧告審決の性質上、審決によって上告会社が違反行為者であると確定されるわけではなく、社会的評価の低下による名誉毀損も法的利益の侵害とはいえない。また、D製薬が審決に従い契約条項を削除したとしても、それはD製薬の自由意思による応諾に基づくものであり、法的評価としてはD製薬自身の意思による契約の破棄ないし債務不履行にすぎない。審決が上告会社の契約上の権利を直接強制的に侵害するものとはいえず、他に権利侵害を肯定すべき特段の事情も認められない。
結論
上告会社は本件審決の取消しを訴求する原告適格を有しない。したがって、本件訴えを却下した原審の判断は正当である。
実務上の射程
名宛人の合意を前提とする「勧告審決(現行法の同意審決制度等に類する)」特有の論理であり、第三者の権利を直接制約する行政処分一般に適用されるものではない。答案では、処分の法的効果が第三者に及ばないこと、および事実上の不利益(名誉毀損や契約不履行)が「法律上の利益」に含まれないことを論じる際に参照すべき判例である。
事件番号: 昭和50(行ツ)115 / 裁判年月日: 昭和53年4月4日 / 結論: 棄却
公正取引委員会が、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定に違反する行為があると認めた場合に、違反行為をした者に対し、勧告審決の手続により勧告するか審判審決の手続により審判を開始するかは、その裁量に任されている。