一 公正取引委員会が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二〇条(昭和二八年法律第二五九号による改正前)により不公正な競争方法であるかどうかを認定するにあたつては、単にその行為の外観にのみとらわれることなく、かかる行為の行われた客観的情勢をも勘案し、その行為の意図とするところをも考慮すべきである。 二 新聞社の新聞販売店に対する見本紙の供給は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二八年法律第二五九号による改正前)第二条第六項第五号の「経済上の利益の供給」にあたる。
一 公正取引委員会が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二〇条(昭和二八年法律第二五九号による改正前)により不公正な競争方法と認定するに際し行為の外観にあらわれていない意図を考慮することの可否。 二 新聞社の新聞販売店に対する見本紙の供給は私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二八年法律第二五九号による改正前)第二条第六項第五号の「経済上の利益の供給」にあたるか。
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和28年法律259号による改正前)20条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和28年法律259号による改正前)2条6項本文5号
判旨
不公正な取引方法に該当するか否かの判断にあたっては、行為の形式的外観のみならず、客観的情勢や行為の意図をも考慮すべきである。また、新聞の見本紙供給のように一般的に販売増につながるものは、個別の販売店にとって迷惑であっても「経済上の利益」に該当し、これを制限する行為は独占禁止法違反となり得る。
問題の所在(論点)
1. 形式的には正当な主張に見える声明であっても、その主観的意図や背景事情によって不公正な取引方法と認定できるか。 2. 販売店にとって迷惑となり得る「見本紙の供給」が、独占禁止法上の「経済上の利益」に該当するか。
規範
公正取引委員会が不公正な取引方法の差止を命ずるに際しては、単に当該行為の外観のみにとらわれることなく、行為が行われた客観的情勢や行為の意図するところを総合的に勘案して判断すべきである。また、取引の相手方に提供される物品等が一般的に見て販売促進等の利益をもたらす性質を有する場合、それは「経済上の利益」に該当し、当該利益の供給を受けないことを取引の条件とすることは、不公正な取引方法を構成し得る。
重要事実
上告人(新聞社)は、他の新聞社(E社)との競争において、販売店が上告人の新聞を取り扱う条件として、E社から見本紙の供給を受けないことを求めた。また、上告人を含む複数社は、連名で「合売制度維持」を掲げる声明(八社声明)を発表したが、その実態はE社の新聞を取り扱う販売店に対しては自社の新聞を供給しない旨の意図を表明するものであった。公正取引委員会は、これらが不公正な取引方法に該当するとして、行為の撤回等を命ずる審決をしたため、上告人がその取り消しを求めて提訴した。
あてはめ
1. 八社声明について:外観上は合売制維持という当然の事項を述べたに過ぎないが、当時の客観的情勢や上告人の意図に照らせば、特定他社の新聞を取り扱う限り自紙を供給しないという排他的な意図の表明であると認められるため、違法な不公正な取引方法にあたる。 2. 見本紙の供給について:個々の販売店において迷惑が生じる場合があるとしても、一般に供給を受けて販売部数を増加させ得る以上、客観的には利益と評価される。したがって、これを拒絶することを取引条件とすることは、経済上の利益の供給を制限する不公正な手段に該当する。
結論
上告人の行為を不公正な取引方法とした審決および原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
不当な取引制限や不公正な取引方法の認定において、行為の『意図』や『背景事情』を重視する実務上の指針となっている。特に、一見して中立的な声明であっても排他的効果を持つ場合には違法となり得ること、また『経済上の利益』を客観的・一般的な性質から判断することを明らかにした点で、答案作成上の重要な規範となる。
事件番号: 昭和30(オ)535 / 裁判年月日: 昭和36年4月25日 / 結論: 棄却
商標登録出願公告に際し指定商品中遺脱されたものがあつても、商標登録で指定商品とされている以上、その遺脱された商品について商標登録は無効ではない。