商標登録出願公告に際し指定商品中遺脱されたものがあつても、商標登録で指定商品とされている以上、その遺脱された商品について商標登録は無効ではない。
商標登録出願公告における指定商品の一部遺脱と商標登録の効力。
旧商標法(大正10年法律99号)5条,旧商標法(大正10年法律99号)7条1項,旧商標法(大正10年法律99号)7条2項,旧商標法(大正10年法律99号)24条,旧特許法(大正10年法律96号)73条
判旨
商標登録出願の公告において指定商品の一部が遺脱された場合であっても、審査官は異議の有無にかかわらず適正な査定をなすべき職務権限を有するため、当該登録査定や登録は当然には無効とならない。
問題の所在(論点)
商標法上の出願公告において、指定商品の一部が誤って遺脱されたまま登録査定がなされた場合、その商標登録は無効となるか。公告制度の趣旨と審査官の職務権限の範囲が問題となる。
規範
商標法における出願公告及び登録異議申立制度の趣旨は、審査官に異議についても審査考量させた上で過誤なき査定をなさしめる点にある。審査官は、異議の有無にかかわらず、異議が起こり得るあらゆる事項について探知検討して適正な査定をなすべき職務権限を有する。したがって、公告において指定商品の記載が遺脱されたとしても、直ちに当該登録を当然無効とすべき事由には当たらない。
重要事実
先願商標(登録第三七九九四五号)の登録出願公告決定および商標原簿には、指定商品として「鎌、剃刀、鉋、庖丁、剪刀、鋸、小刀、鑿」の8種が記載されていた。しかし、実際の商標公報による出願公告では、これらの一部である「小刀、鑿、剪刀、鋸」のみが記載され、他の4種が遺脱されていた。その後、当該先願商標は全8種を対象として登録されたが、後願の商標登録出願をしようとした上告人が、公告の不備を理由に先願商標の効力を争った。
事件番号: 昭和31(オ)312 / 裁判年月日: 昭和35年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】審決に明白な誤謬がある場合は更正により是正可能であり、それのみを理由に審決を取り消すことはできない。また、指定商品の主成分の略称から成る商標は、自他商品識別力を欠き、商標登録を受けることができない。 第1 事案の概要:上告人は「炭カル」という商標を指定商品「肥料」について登録しようとした。しかし、…
あてはめ
本件では、出願公告決定や商標原簿には本来の指定商品が正しく記載されており、公報上の記載漏れは単純な誤記にすぎない。公告制度はあくまで適正な審査を補完するものであり、審査官には自ら職権で適正な査定を行うべき権限がある以上、公告に一部欠落があったとしても、審査官が全商品を対象として登録査定を下した判断自体を否定する根拠にはならない。したがって、遺脱された商品に関する登録査定や登録が当然に無効であるとはいえない。
結論
指定商品の記載に遺脱がある出願公告に基づくなされた登録であっても、当然無効とはならない。本件後願商標の登録出願を排斥した原審決は正当である。
実務上の射程
手続上の瑕疵が登録の有効性に及ぼす影響を限定的に解した判例である。審査官の職権探知・判断権限を重視しており、公告という公示手続に不備があっても、実体的な登録の効力が直ちに否定されるわけではないことを示している。行政処分の公定力や手続的瑕疵の治癒という観点からの議論に親和性が高い。
事件番号: 昭和30(オ)434 / 裁判年月日: 昭和32年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標の特別顕著性は指定商品との関係で相対的に判断されるべきであり、指定外の商品について特別顕著性が認められても登録は認められない。また、拒絶査定において新たな具体例が付加されても、それが拒絶理由の核心(特別顕著性の欠如)を説明するものであれば、改めて通知を要する新たな拒絶理由には当たらない。 第1…
事件番号: 昭和30(オ)433 / 裁判年月日: 昭和32年3月5日 / 結論: 棄却
商標登録出願者が指定した商品について出願商標が特別顕著性を認められない場合は、指定商品のうち一部について永年使用による特別顕著性が認められても、登録を拒絶することは違法でない。