商標登録出願者が指定した商品について出願商標が特別顕著性を認められない場合は、指定商品のうち一部について永年使用による特別顕著性が認められても、登録を拒絶することは違法でない。
商標登録出願者の指定した商品のうち一部についての永年使用による特別顕著性と登録拒絶の適否。
判旨
商標の特別顕著性(識別力)は指定商品との関連において判断されるべきであり、指定商品以外の商品について顕著性を有していても、当該出願に係る商標登録を認めることはできない。
問題の所在(論点)
商標登録の要件である特別顕著性(識別力)の有無を判断するにあたり、指定商品以外の商品の使用実績や、他の商品区分での登録事実を考慮すべきか。また、指定商品に含まれない商品での顕著性をもって、当該出願の登録を認めることができるか。
規範
商標の特別顕著性(識別力)の有無は、当該商標が使用される指定商品との関連において相対的に判断されるべきものである。したがって、同一の商標であっても、他の指定商品について登録されている事実や、指定商品に含まれない他の商品において永年の使用により顕著性を獲得している事実は、直ちに当該出願における特別顕著性を基礎付けるものではない。
重要事実
上告人は、商標「(北)」について、指定商品を「第五十八類、他類に属せざる木、竹、籐、木皮、竹皮類の製品、その他漆塗品及び蒔絵品の類」として登録出願した。これに対し、特許庁は本件商標には特別顕著性がないとして拒絶査定を下した。上告人は、立看板、木皿、盆、ゴム製浮袋等の商品において本件商標が永年の使用により顕著性を得ていることや、他の商品を指定商品とする同商標が既に登録されていることを根拠に、本件商標の識別力を主張して上告した。
あてはめ
商標法上の手続において、登録の可否は出願人が指定した商品に基づいて判断される。本件において、上告人が主張する「立看板、木皿、盆、ゴム製浮袋等」は、本件出願の指定商品として表示されていない。たとえこれらの商品について永年の使用により顕著性を有するに至ったとしても、指定商品でない以上、本件出願の登録根拠とはなし得ない。また、商標の顕著性は指定商品との関連で決まるため、他の類の商品で登録されている事実は、本件指定商品における顕著性を直ちに証明するものではない。特許庁が「印鑑の拡大に過ぎない」とした点も、顕著性欠如の具体的説明として許容される。
事件番号: 昭和30(オ)434 / 裁判年月日: 昭和32年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標の特別顕著性は指定商品との関係で相対的に判断されるべきであり、指定外の商品について特別顕著性が認められても登録は認められない。また、拒絶査定において新たな具体例が付加されても、それが拒絶理由の核心(特別顕著性の欠如)を説明するものであれば、改めて通知を要する新たな拒絶理由には当たらない。 第1…
結論
商標の識別力は指定商品ごとに判断されるべきであり、指定外の商品での使用実績や他区分での登録を理由に、本件出願の拒絶を違法とすることはできない。上告棄却。
実務上の射程
商標法3条1項各号(特に3号や6号)の識別力判断の基準が「指定商品との関係」にあることを示した重要判決である。答案上は、使用による識別力(3条2項)を論じる際にも、主張される使用実績が「指定商品」の範囲内であるかを確認する論理として活用できる。
事件番号: 昭和24(オ)133 / 裁判年月日: 昭和25年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標の類否判断において、外観に相違がある場合であっても、構成部分から生ずる称呼及び観念が共通し、取引の実情に照らして商品の出所について混同を生ずるおそれがあるときは、類似の商標と解される。 第1 事案の概要:本件登録商標(「獅子印」等を含む図形商標。以下「本標章」)に対し、他者の商標(「クロライオ…
事件番号: 昭和33(オ)766 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
「シンガーミシン」がその呼称で世界的に著名な裁縫機械として取引されているという取引事情の下では、裁縫機械を指定商品とする商標「シンカ」と「シンガー」とは類似するものと認むべきである。
事件番号: 昭和29(オ)791 / 裁判年月日: 昭和31年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】引用商標が長期間使用されていない場合であっても、適法な手続によって登録が取り消されていない限り、当該商標と類似する商標の登録を拒絶する根拠となり得る。商標の類似性判断においては、外観・観念等の要素を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:上告人は、自らの出願商標が登録第71103号商標(引…
事件番号: 昭和34(オ)448 / 裁判年月日: 昭和35年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標の類似性判定において、過去に同一または類似の商標が併存していた事実があったとしても、現在の時点における類似性の認定を妨げるものではない。 第1 事案の概要:上告人は、自らの出願商標が引用商標と類似しないと主張して上告した。上告人は、出願商標の図形からは「トナカイ」または「鹿」の観念が生じるため…