判旨
引用商標が長期間使用されていない場合であっても、適法な手続によって登録が取り消されていない限り、当該商標と類似する商標の登録を拒絶する根拠となり得る。商標の類似性判断においては、外観・観念等の要素を総合的に考慮して判断される。
問題の所在(論点)
1. 外観が類似し観念が同一である商標の登録可能性。2. 長期間使用されていない登録商標が、他の商標の登録を排除する有効な拒絶理由(先願登録)となり得るか。
規範
商標の類似性は、外観、称呼、観念を総合的に考察し、商品の出所について混同を生じるおそれがあるか否かにより判断する。また、登録商標が現実に出願時において長期間使用されていない実態があったとしても、法定の取消手続(不使用取消審判等)によってその登録が抹消されない限り、当該商標は依然として有効な先願登録商標として存続し、後願商標の登録を阻む効力を有する。
重要事実
上告人は、自らの出願商標が登録第71103号商標(引用商標)と類似するとされた原審の判断を不服として上告した。上告人は、原判決が外観・観念の類似を認めた点は不当であると主張するとともに、引用商標が40余年もの長期間にわたって現実には使用されていないという事実を指摘し、そのような商標を理由に自らの商標登録を拒むべきではないと主張した。
あてはめ
本件出願商標は、引用商標と外観において類似し、かつ観念において同一である。このような場合、取引者や需要者において商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるといえるため、両商標は類似すると判断される。また、上告人が指摘する「引用商標が40余年間使用されていない」という事実については、当時の商標法14条1号(現行法の不使用取消審判に相当する規定)に基づく取消手続がなされていない以上、法律上は有効な商標権として存続している。したがって、その不使用の実態をもって直ちに登録の障害にならないと解することはできず、類似する後願商標の登録を制限する効力を有するといえる。
結論
引用商標が適法に取り消されていない以上、これと類似する本件出願商標は登録を受けることができない。したがって、上告を棄却する。
事件番号: 昭和33(オ)766 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
「シンガーミシン」がその呼称で世界的に著名な裁縫機械として取引されているという取引事情の下では、裁縫機械を指定商品とする商標「シンカ」と「シンガー」とは類似するものと認むべきである。
実務上の射程
商標の無効や取消は、特許庁の審判等、法に定められた適法な手続を経て初めて確定するものである。侵害訴訟や登録異議等の場面において、単に「相手方の商標が使われていない」と抗弁するだけでは足りず、不使用取消審判等を別途申し立てて登録を抹消させなければ、先願登録商標としての排他力を免れないという実務上の原則を確認したものである。
事件番号: 昭和29(オ)251 / 裁判年月日: 昭和30年7月5日 / 結論: 棄却
石鹸を指定商品とする商標「D」は株式会社E社代理部取扱商品と誤認を生ぜしめるおそれがあり、商標法第二条第一項第一一号にあたる。
事件番号: 昭和34(オ)448 / 裁判年月日: 昭和35年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標の類似性判定において、過去に同一または類似の商標が併存していた事実があったとしても、現在の時点における類似性の認定を妨げるものではない。 第1 事案の概要:上告人は、自らの出願商標が引用商標と類似しないと主張して上告した。上告人は、出願商標の図形からは「トナカイ」または「鹿」の観念が生じるため…
事件番号: 昭和39(行ツ)110 / 裁判年月日: 昭和43年2月27日 / 結論: 棄却
糸一般を指定商品とし「しようざん」の称呼をもつ商標と硝子繊維糸のみを指定商品とし「ひようざん」の称呼をもつ商標とでは、右両商標が外観および観念において著しく異なり、かつ、硝子繊維糸の取引では、商標の称呼のみによつて商標を識別しひいて商品の出所を知り品質を認識するようなことがほとんど行なわれないのが実情であるときは、両者…
事件番号: 昭和24(オ)133 / 裁判年月日: 昭和25年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標の類否判断において、外観に相違がある場合であっても、構成部分から生ずる称呼及び観念が共通し、取引の実情に照らして商品の出所について混同を生ずるおそれがあるときは、類似の商標と解される。 第1 事案の概要:本件登録商標(「獅子印」等を含む図形商標。以下「本標章」)に対し、他者の商標(「クロライオ…