判旨
商標の特別顕著性は指定商品との関係で相対的に判断されるべきであり、指定外の商品について特別顕著性が認められても登録は認められない。また、拒絶査定において新たな具体例が付加されても、それが拒絶理由の核心(特別顕著性の欠如)を説明するものであれば、改めて通知を要する新たな拒絶理由には当たらない。
問題の所在(論点)
1.指定商品以外の商品について特別顕著性を取得している場合、当該指定商品について登録が認められるか。2.他の商品で登録されている事実は、本件指定商品についての顕著性を根拠付けるか。3.拒絶査定時に付加された具体的説明は、新たな拒絶理由として通知を要するか。
規範
1.商標の特別顕著性(識別力)は、登録出願において指定された商品との関連において個別に判断されるべきものである。2.拒絶理由の通知について、査定において示された新たな事情が、既に通知済みの拒絶理由(例:特別顕著性の欠如)を具体的に説明・補足する範囲に留まる場合は、改めて通知や意見書提出の機会を与える必要はない。
重要事実
上告人は「第十六類、護謨(ゴム)製品」等を表示して商標登録出願を行った。特許庁は、本件商標には特別顕著性がないとして拒絶査定をした。その際、拒絶の理由として「本件商標は普通一般に使用される印鑑を拡大したものに過ぎない」という説明を付加したが、これについての事前通知はなかった。上告人は、指定商品ではない「立看板、木皿、盆」等について本件商標が永年の使用により顕著性を得ていることや、他の商品については既に登録されていること、及び新たな理由の通知がない手続違背を主張して争った。
あてはめ
1.商標登録出願は指定された商品についてなされるものであり、指定されていない商品(立看板等)について特別顕著性を有していても、本件出願の手続において登録を認めることはできない。2.商標の顕著性は指定商品ごとに判断すべき相対的な概念である。したがって、他の商品カテゴリで登録されているという事実は、直ちに本件指定商品における顕著性を基礎付けるものではない。3.「印鑑を拡大したものに過ぎない」との記述は、拒絶の核心である「特別顕著性の欠如」を説明する具体例に過ぎない。既存の拒絶理由の枠内にあるため、手続的権利を侵害するものではない。
結論
本件商標には指定商品との関係で特別顕著性が認められず、また拒絶査定の手続にも違法はないため、上告を棄却する。
事件番号: 昭和30(オ)433 / 裁判年月日: 昭和32年3月5日 / 結論: 棄却
商標登録出願者が指定した商品について出願商標が特別顕著性を認められない場合は、指定商品のうち一部について永年使用による特別顕著性が認められても、登録を拒絶することは違法でない。
実務上の射程
商標の識別力が「指定商品との相対的関係」で決まるという基本原則を確認する際に有用である。また、行政手続(拒絶理由通知)の程度について、通知済みの理由を補足する程度であれば不意打ちにならず、改めての通知を要しないとする基準として実務上重要である。
事件番号: 昭和24(オ)134 / 裁判年月日: 昭和25年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標の類似性は、商標の混同誤認を防止するという目的から、隔離的観察に基づき称呼、外観、観念を総合して判断すべきであり、商標の一部が「主要な部分」として認識される場合には、その要部を中心に類否を判断できる。 第1 事案の概要:本件では、登録商標(A商標)と、それに対し類似すると主張された商標(B商標…
事件番号: 昭和24(オ)133 / 裁判年月日: 昭和25年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標の類否判断において、外観に相違がある場合であっても、構成部分から生ずる称呼及び観念が共通し、取引の実情に照らして商品の出所について混同を生ずるおそれがあるときは、類似の商標と解される。 第1 事案の概要:本件登録商標(「獅子印」等を含む図形商標。以下「本標章」)に対し、他者の商標(「クロライオ…
事件番号: 昭和34(オ)448 / 裁判年月日: 昭和35年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標の類似性判定において、過去に同一または類似の商標が併存していた事実があったとしても、現在の時点における類似性の認定を妨げるものではない。 第1 事案の概要:上告人は、自らの出願商標が引用商標と類似しないと主張して上告した。上告人は、出願商標の図形からは「トナカイ」または「鹿」の観念が生じるため…
事件番号: 昭和29(オ)791 / 裁判年月日: 昭和31年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】引用商標が長期間使用されていない場合であっても、適法な手続によって登録が取り消されていない限り、当該商標と類似する商標の登録を拒絶する根拠となり得る。商標の類似性判断においては、外観・観念等の要素を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:上告人は、自らの出願商標が登録第71103号商標(引…