一、昭和二八年公正取引委員会告示第一一号(不公正な取引方法)の八にいう取引の拘束があるとするためには、必ずしも相手方においてその取引条件に従うことが契約上の義務として定められていることを要せず、それに従わない場合に経済上なんらかの不利益を伴うことにより、現実にその実効性が確保されていれば足りる。 二、昭和二八年公正取引委員会告示第一一号(不公正な取引方法)の八にいう正当な理由とは、取引につけられた拘束条件が相手方の事業活動における自由な競争を阻害するおそれがないことをいうものであり、単に事業者の事業経営上又は取引上必要あるいは合理的であるというだけでは、右の正当な理由があるとすることはできない。 三、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律六九条にいう利害関係人とは、当該事件の被審人のほか、同法五九条、六〇条により審判手続に参加しうるもの及び当該事件の対象をなす違反行為の被害者をいう。 四、公正取引委員会の審決の取消訴訟においては、審判で取り調べられた証拠はすべて当然に裁判所の判断資料となるものであり、右証拠につき改めて証拠調に関する手続を行う余地はない。
一、昭和二八年公正取引委員会告示第一一号(不公正な取引方法)の八にいう取引の拘束があるとされる場合 二、昭和二八年公正取引委員会告示第一一号(不公正な取引方法)の八にいう正当な理由の意義 三、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律六九条にいう利害関係人の範囲 四、公正取引委員会の審判で取り調べられた証拠の審決取消訴訟における取扱
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条7項4号,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律69条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律78条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律80条,昭和28年公正取引委員会告示11号8項,民訴法第3章第1節
判旨
不公正な取引方法における「拘束」とは、契約上の義務に限らず、不遵守に対し経済上の不利益を伴うことで現実に実効性が確保されていれば足りる。また「正当な理由」とは、専ら公正な競争秩序維持の見地から、相手方の自由な競争を阻害するおそれがないことを指し、単なる事業経営上の合理性等はこれに当たらない。
問題の所在(論点)
1. 相手方の価格や販売先を制限する行為が、不公正な取引方法(一般指定8項、現12項)の「拘束」に該当するか。 2. 市場占拠率が低い場合でも「拘束」が認められるか。 3. 再販売価格維持行為における「正当な理由」の意義と判断基準。
規範
1. 一般指定にいう「拘束」とは、必ずしも契約上の義務として定められていることを要せず、それに従わない場合に経済上何らかの不利益を伴うことにより、現実にその実効性が確保されていれば足りる。 2. 「正当な理由」とは、専ら公正な競争秩序維持の見地からみた観念であって、当該拘束条件が相手方の事業活動における自由な競争を阻害するおそれがないことをいう。単に競争秩序維持と直接関係のない事業経営上・取引上の合理性や必要性があるにすぎない場合は、これに当たらない。
重要事実
育児用粉ミルクの製造販売業者である上告人は、卸売業者に対し、指示した卸売・小売価格の遵守や販売先の制限を含む販売対策を実施した。具体的には、指示価格を守らない卸売業者に対し、後払いする「感謝金」(歩戻金)の算定で不利益な処置を採る等の手段を講じていた。上告人は、自社の市場占拠率が低く、販売業者への強制力がないこと、またブランド維持等の経営上の必要性(正当な理由)があることを主張して争った。
あてはめ
1. 上告人の販売対策は、指示価格に従わない場合に「感謝金」の減額という経済的不利益を課すものであり、相手方を現実に従わせる実効性があるため「拘束」に該当する。 2. 粉ミルクは銘柄指定で購入される特性があり、販売店にとって特定銘柄の備え付けは不可欠である。したがって、市場占拠率が低くても、卸売業者は利潤確保のために上告人の制限に従わざるを得ない状態にあり、「拘束」の認定は妨げられない。 3. 再販売価格維持行為により、販売業者間の自由な価格競争が制限される以上、たとえブランド間競争が強化される等の経営上の合理性があっても、公正な競争秩序維持の見地からは「正当な理由」があるとはいえない。
結論
上告人の行為は、卸売業者と小売業者の取引を拘束する条件を付けて取引したものとして、不公正な取引方法に該当する。上告人の請求を棄却した原判決は正当である。
実務上の射程
再販売価格維持行為(垂直的制限)における「拘束」と「正当な理由」の基本的解釈を示すリーディングケースである。特に、契約上の義務がなくても経済的不利益(リベートのカット等)によって実効性が確保されていれば拘束に当たる点、及び「正当な理由」が主観的な経営目的ではなく客観的な競争阻害性の有無で判断される点は、実務上極めて重要である。
事件番号: 昭和30(オ)261 / 裁判年月日: 昭和36年1月26日 / 結論: 棄却
一 公正取引委員会が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二〇条(昭和二八年法律第二五九号による改正前)により不公正な競争方法であるかどうかを認定するにあたつては、単にその行為の外観にのみとらわれることなく、かかる行為の行われた客観的情勢をも勘案し、その行為の意図とするところをも考慮すべきである。 二 新聞社の…