二以上の商品を指定商品とする商標登録の出願者が、手続の補正をすることができない時期に至つて、出願時に遡つて一部の商品を除外し残余の商品を指定商品とする商標登録出願にするためにいわゆる指定商品の一部放棄をしても、その効力を生じない。
商標登録出願について手続の補正ができない時期に至つてされたいわゆる指定商品の一部放棄の効力の有無
商標法4条1項11号,商標法8条,商標法(昭和45年法律第91号による改正前のもの)77条2項,特許法(昭和45年法律第91号による改正前のもの)17条1項
判旨
審決後にされた指定商品の一部放棄は、商標法8条3項の適用や類推適用の対象とはならず、出願時まで遡及して指定商品を減縮する効果を認められない。
問題の所在(論点)
審決後になされた指定商品の一部放棄に、出願時まで遡及して指定商品を減縮させる効果(商標法8条3項の適用又は類推適用)が認められるか。
規範
1. 指定商品の減縮及びその遡及効を目的とする手続は、商標法77条2項(旧法)が準用する特許法17条1項の「手続の補正」によるべきである。2. 補正は時期的制限(事件の係属中)があるため、審決後にされた一部放棄には補正としての効果は生じない。3. 商標法8条3項が「放棄」に遡及効を認めるのは先願・同日出願の地位を失わせるための規定であり、先行登録商標との類似が問題となる4条1項11号の場面において、後願者が行う一部放棄に同条3項を適用又は類推適用することはできない。
重要事実
上告人は商標「the Union」を印刷物等について出願したが、他人の登録商標「THE UNION READERS」と類似し、かつ指定商品の「英語読本」とも類似するとして、商標法4条1項11号により拒絶審決を受けた。上告人は審決後、訴訟提起前(又は同時期)に指定商品の一部を放棄する書面を提出。一部放棄により出願が遡及的に減縮された結果、審決時における指定商品は引用商標の商品と非類似になったはずであり、審決には事実誤認があるとして取消しを求めた。
あてはめ
上告人の意図は指定商品の減縮とその遡及効にあるが、商標法上の正規の手続は補正(旧法77条2項、特許法17条1項)である。本件では審決により審判の係属を離れた後の放棄であるため、補正としての時期的要件を欠く。また、8条3項は先願地位の解消を目的とする規定であり、本件のように先行登録商標が存在する4条1項11号の場面は必然的に後願であるため、同項の趣旨が妥当しない。したがって、審決後の一部放棄によって出願内容を遡及的に変更することはできない。
結論
審決後にされた指定商品の一部放棄には、出願時まで遡及して商品を減縮する効果は生じない。よって、審決時の指定商品を前提とした類似判断に事実誤認はなく、審決取消請求は認められない。
実務上の射程
拒絶査定不服審判の審決取消訴訟において、審決後の事由(商品減縮等)によって審決の違法を主張することはできないという、審決取消訴訟の「審決時基準」を実務上裏付ける判例として機能する。
事件番号: 昭和57(行ツ)99 / 裁判年月日: 昭和58年2月17日 / 結論: 棄却
商標登録無効審判手続において、除斥期間経過後は新たな無効理由を追加主張することは許されない。