商標登録無効審判手続において、除斥期間経過後は新たな無効理由を追加主張することは許されない。
商標登録無効審判手続において除斥期間経過後新たな無効理由を追加主張することの許否
旧商標法(大正10年法律第99号)2条1項,旧商標法(大正10年法律第99号)16条1項,旧商標法(大正10年法律第99号)23条,商標法4条1項,商標法46条1項,商標法47条
判旨
商標登録の無効審判において、無効理由は各理由ごとに一個の請求を構成するため、除斥期間経過後に新たな無効理由を追加主張することは許されない。
問題の所在(論点)
商標登録の無効審判手続において、請求の基礎となった当初の無効理由とは異なる別の無効理由を、除斥期間(登録の日から5年)の経過後に追加主張できるか。無効審判の「請求」の単位が問題となる。
規範
商標登録の無効事由は法に列挙されており、また確定審決の登録後は同一事実・同一証拠に基づく審判請求が禁止される(一事不再理)。これらの規定に照らせば、商標登録の無効審判請求は、各無効理由ごとに一個の請求があるものと解すべきである。したがって、無効審判請求後に新たな無効理由を追加主張することは、実質的に新たな無効審判の請求を追加することに相当するため、除斥期間経過後はこのような追加主張は許されない。
重要事実
上告人は、被上告人の登録商標「D盛光」に対し、昭和48年に無効審判を請求した。当初の無効理由は、上告人の使用商標との類似(旧商標法2条1項8号等)であった。しかし、審判請求から5年、商標登録の日から約8年が経過した昭和53年になって、上告人は「他人の登録商標との類似」(旧法2条1項9号)という新たな無効理由を補充書により追加主張した。特許庁がこの追加理由を判断せずに請求棄却の審決をしたため、上告人が判断遺脱を理由に審決取消訴訟を提起した。
事件番号: 昭和57(行ツ)99 / 裁判年月日: 昭和58年2月17日
【結論(判旨の要点)】商標登録無効審判において、請求人が審判請求後に当初の理由と異なる無効事由を追加主張することは、審判請求の要旨を変更するものとして原則として許されない。 第1 事案の概要:大正11年に設定登録された「セイコー」の文字からなる商標に対し、審判請求人は商標登録無効審判を請求した。請求人は審判手続の過程に…
あてはめ
本件において、上告人が最初に行なった無効主張は未登録の自社商標との混同等に関するものであった。これに対し、後から追加された「引用登録商標(他人の登録商標)との類似」という理由は、法律上の根拠条文(無効事由)を異にするものである。商標法上、無効審判請求は各無効理由ごとに一個の請求として成立するため、この追加は新請求の追加と解される。本件商標の登録日は昭和45年12月18日であり、追加主張がなされた昭和53年9月29日は、旧法23条(新法47条)が定める5年の除斥期間を明らかに経過している。ゆえに、当該追加主張は不適法であり、特許庁がこれに判断を示さなかったとしても審決の違法とはならない。
結論
除斥期間経過後の無効理由の追加主張は不適法である。特許庁がこれに明示的な判断を示さずとも、請求を排斥した審決の結論に影響はなく、審決取消事由とはならない。
実務上の射程
商標無効審判の請求範囲を画定する重要判例である。答案上は、無効理由の「追加」が除斥期間制限や一事不再理の範囲とどう関わるかを論じる際に引用する。特に、無効理由ごとに一個の請求が構成されるという理論構成(請求単位論)は実務上の基本原則となっている。
事件番号: 平成15(行ヒ)353 / 裁判年月日: 平成17年7月11日 / 結論: 棄却
商標法(平成3年法律第65号による改正前のもの)4条1項15号違反を理由とする商標登録の無効の審判請求が商標法(平成8年法律第68号による改正前のもの)47条所定の除斥期間を遵守したものであるというためには,除斥期間内に提出された審判請求書に,請求の理由として,当該商標登録が上記15号の規定に違反するものである旨の主張…