商標法(平成3年法律第65号による改正前のもの)4条1項15号違反を理由とする商標登録の無効の審判請求が商標法(平成8年法律第68号による改正前のもの)47条所定の除斥期間を遵守したものであるというためには,除斥期間内に提出された審判請求書に,請求の理由として,当該商標登録が上記15号の規定に違反するものである旨の主張が記載されていることをもって足りる。
商標法(平成3年法律第65号による改正前のもの)4条1項15号違反を理由とする商標登録の無効の審判請求の除斥期間の遵守と審判請求書における請求の理由の記載
商標法(平成3年法律第65号による改正前のもの)4条1項15号,商標法(平成8年法律第68号による改正前のもの)46条1項,商標法(平成8年法律第68号による改正前のもの)47条,商標法(平成8年法律第68号による改正前のもの)56条1項,特許法(平成8年法律第68号による改正前のもの)131条1項
判旨
商標法47条の除斥期間内に提出された無効審判請求書に、請求の理由として当該商標登録が4条1項15号に違反する旨の主張の記載があれば、具体的な事実関係の記載がなくても除斥期間を遵守したものと認められる。
問題の所在(論点)
商標法47条所定の除斥期間内に提出された無効審判請求書において、適用条文の掲記のみがあり具体的な事実関係の記載を欠く場合に、同条にいう「除斥期間内に請求があった」といえるか。具体的事実の記載が期間遵守の要件となるかが問われた。
規範
商標法47条が15号違反の無効審判に5年の除斥期間を設けた趣旨は、既存の継続的状態を保護する点にある。もっとも、15号に違反する商標は本来登録されるべきでないものであり、早期確定による商標権者保護の要請は強くない。したがって、除斥期間内に審判請求がなされ、請求書に「15号違反」である旨の主張の記載があれば、既存の継続的状態は覆されたとみるべきである。よって、具体的な事実関係の記載までは不要であると解する。
重要事実
本件商標権者である上告人に対し、被上告人は除斥期間が満了する直前に無効審判を請求した。当該審判請求書には、請求の理由として「本件商標登録は4条1項15号に違反し無効とされるべきである」旨と「詳細な理由は追って補充する」旨のみが記載されていた。その後、除斥期間経過後に、審判長の補正指令に基づき「VALENTINO」等の著名商標との混同のおそれがあるという具体的な事実関係が補充された。上告人は、期間内に具体的理由が示されていない以上、除斥期間を徒過しており不適法であると主張した。
あてはめ
本件における被上告人の審判請求書には、本件商標登録が15号の規定に違反してされたものであるため無効とされるべきである旨が明記されていた。前述の規範に照らせば、47条の除斥期間を遵守したというためには、請求の理由として「15号に違反する」という法的主張の記載があれば足りる。たとえ除斥期間経過後に具体的な事実関係(他人の著名商標との混同等)が補正によって補充されたとしても、当初の請求書において条文違反の主張がなされている以上、既存の継続的な状態は適法に覆されたと評価できる。
結論
本件審判請求は除斥期間を徒過したものではなく適法である。したがって、本件審判請求を適法として無効審決を下した原審の判断に、商標法47条の解釈適用の誤りはない。
実務上の射程
本判決は無効審判における除斥期間の遵守判定について、実務上緩やかな基準を示したものである。答案上は、期間制限のある無効理由(4条1項10号、15号、17号等)について、請求書の「理由」の記載が不十分な場合の救済法理として活用できる。ただし、方式違反(商標法56条1項、特許法131条2項等)の補正命令とその効力という文脈での整理が必要となる。
事件番号: 昭和53(行ツ)138 / 裁判年月日: 昭和54年3月30日 / 結論: 棄却
商標法四七条の適用のある商標登録無効審判の審判請求書は、特許法一九条にいう「この法律の規定により特許庁に提出する書類その他の物件であつてその提出の期間が定められているもの」にあたる。