商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に,分割出願がされ,もとの商標登録出願について指定商品等を削除する補正がされたときには,その補正の効果が商標登録出願の時にさかのぼって生ずることはない。
商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に分割出願がされもとの商標登録出願について指定商品等を削除する補正がされたときにおける補正の効果が生ずる時期
商標法10条1項,商標法10条2項,商標法68条の40第1項,商標法施行規則22条4項,特許法施行規則30条
判旨
拒絶審決後の出願分割に伴うもとの商標登録出願の指定役務削除補正には、出願時への遡及効は認められない。したがって、訴訟係属中の補正により指定役務が減縮されても、審決時の判断が結果的に誤りとなることはない。
問題の所在(論点)
拒絶審決取消訴訟の係属中に商標法10条1項の分割出願及びそれに伴うもとの出願の補正がなされた場合、その補正の効果は出願時に遡及するか。また、それにより審決の判断が違法となるか。
規範
商標法10条に基づく出願分割に伴う「もとの出願」の願書補正は、商標法68条の40第1項(特許法17条の2に相当する規定)の補正ではないため、その効果が出願時に遡及することはない。拒絶審決取消訴訟は審決の適法性を争うものであり、補正の遡及効が認められない以上、審決後にされた補正によって審決の判断が遡及的に誤りとなることはない。
重要事実
被上告人は「eAccess」等の商標につき、建築一式工事を含む複数の役務を指定して出願したが、先願商標との類似を理由に拒絶審決を受けた。被上告人は本件審決取消訴訟を提起した後、商標法10条1項に基づき、指定役務の一部を新たな出願として分割し、もとの出願(本件出願)の指定役務を「建築一式工事」のみに減縮する補正を行った。被上告人は、この分割・補正により指定役務が減縮された以上、審決の類似性判断は誤りになったと主張した。
あてはめ
商標法10条は分割出願自体がもとの出願時にされたとみなす(同2項)が、もとの出願の補正については遡及効を規定していない。同法施行規則22条4項は補正を求めているが、これは遡及効を伴う商標法68条の40第1項の補正とは別個の手続である。もし遡及効を認めれば、補正時期を制限した同条1項の趣旨に反する。また、分割出願自体に出願時遡及効が認められる以上、拒絶理由のない部分を分割して確保できるため、もとの出願の補正に遡及効を認めなくとも出願人の利益は害されない。したがって、本件補正の効果は遡及せず、審決時の役務を基準とした判断に違法はない。
結論
補正の遡及効は認められず、審決が指定役務に関する判断を誤ったことにはならないため、請求は棄却される。
実務上の射程
拒絶審決取消訴訟の係属中に行われる出願分割において、もとの出願(親出願)について審決を覆すことは事実上困難である。実務上は、拒絶理由を解消した「子出願」側での権利化を図るべきであり、親出願の取消訴訟においては補正による役務減縮を理由とした審決取消を主張できない点に注意が必要である。
事件番号: 昭和53(行ツ)140 / 裁判年月日: 昭和56年3月13日 / 結論: 棄却
明細書の「特許請求の範囲」に記載されず、「発明の詳細な説明」又は図面に記載されている発明を目的とする分割出願であつても、右記載が、その発明の属する技術分野における通常の技術的知識を有する者において、発明の要旨とする技術的事項のすべてを正確に理解し、かつ、容易に実施することができる程度にされているときは、右分割出願は適法…