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1 特許を無効にすべき旨の審決の取消請求を棄却した原判決に係る事件の上告審係属中に当該特許について特許請求の範囲を減縮する旨の訂正審決が確定したことにより原判決を破棄する場合に上記無効審決を取り消す旨の自判をした事例 2 特許を無効にすべき旨の審決の取消訴訟の係属中に当該特許について特許請求の範囲を減縮する旨の訂正審決が確定したことにより上記無効審決を取り消す場合に訴訟の総費用を特許権者に負担させた事例
(1,2につき)特許法(平成6年法律第116号による改正前のもの)123条,特許法126条 (1につき)民訴法326条1号,民訴法338条1項8号 (2につき)民訴法62条
判旨
特許無効審決の取消訴訟の係属中に訂正審決が確定し、特許請求の範囲が減縮された場合、原判決の基礎となった行政処分が変更されたものとして、原判決には民事訴訟法338条1項8号の再審事由に準ずる違法がある。この場合、裁判所は特許を無効とした審決を取り消さなければならない。
問題の所在(論点)
特許無効審決の取消訴訟の判決後に、特許請求の範囲を減縮する訂正審決が確定した場合、原判決に「判決の基礎となった行政処分が後の行政処分により変更された」(民訴法338条1項8号)という再審事由に相当する違法が認められるか、またその際の処理はどうあるべきか。
規範
特許無効審決の取消訴訟において、審決後に訂正審決が確定して特許請求の範囲が減縮された場合には、原判決の基礎となった行政処分(無効審決)が後の行政処分(訂正審決)によって変更されたものとみなされ、民訴法338条1項8号所定の再審事由がある。かかる事態が生じたときは、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるものとして、特許を無効とした審決は取り消されるべきである。
重要事実
上告人の特許につき特許庁が特許無効審決を下し、上告人がその取消しを求めて提訴したが、原審は上告を棄却した。上告人が上告受理申立てを行った後、特許請求の範囲を減縮する内容の訂正審決が確定した。これにより、本件無効審決の対象となった特許発明の範囲が、事後的に変更された状態となった。
事件番号: 平成14(行ヒ)200 / 裁判年月日: 平成15年10月31日 / 結論: 破棄差戻
特許を取り消すべき旨の決定の取消請求を棄却した原判決に対して上告又は上告受理の申立てがされ,上告審係属中に当該特許について特許請求の範囲を減縮する旨の訂正審決が確定した場合には,原判決には,民訴法325条2項に規定する法令の違反がある。
あてはめ
本件では、原審の棄却判決の後に訂正審決が確定し、特許請求の範囲が減縮されている。これは、原判決の判断の前提となった対象(無効審決に係る発明の範囲)が、後の行政処分である訂正審決によって実質的に変更されたことを意味する。したがって、民訴法338条1項8号の規定を類推適用すべき状況にあり、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるといえる。また、特許請求の範囲が変われば無効理由の有無も改めて判断されるべきであるから、変更前の範囲を前提とする本件無効審決は維持できない。
結論
原判決を破棄し、特許請求の範囲が減縮される前の前提に基づき下された特許庁の本件無効審決を取り消す。
実務上の射程
特許訴訟における「訂正審決の確定」という後発的事情を、上告審においてどのように救済すべきかを示した判例である。行政事件訴訟法における処分性や裁量の問題ではなく、民訴法の再審事由を根拠に審決を取り消すべきとする構成は、実務上の鉄則として定着している。
事件番号: 平成7(行ツ)204 / 裁判年月日: 平成11年3月9日 / 結論: 破棄自判
平成五年法律第二六号による改正前の特許法の下において、無効審決取消訴訟の係属中に当該特許権について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には、当該無効審決は取り消されなければならない。