特許を取り消すべき旨の決定の取消請求を棄却した原判決に対して上告又は上告受理の申立てがされ,上告審係属中に当該特許について特許請求の範囲を減縮する旨の訂正審決が確定した場合には,原判決には,民訴法325条2項に規定する法令の違反がある。
特許を取り消すべき旨の決定の取消請求を棄却した原判決に係る事件の上告審係属中に当該特許について特許請求の範囲を減縮する旨の訂正審決が確定した場合と民訴法325条2項に規定する法令の違反
民訴法325条2項,民訴法338条1項8号,特許法114条,特許法126条
判旨
特許取消決定の取消請求を棄却した原判決に対し上告審係属中、訂正審決が確定して特許請求の範囲が減縮された場合、原判決の基礎となった行政処分が後の処分により変更されたものとして、民訴法338条1項8号の再審事由に準じた破棄事由となる。
問題の所在(論点)
行政訴訟(特許取消決定取消訴訟)の判決後に、その前提となった行政処分の内容を実質的に変更させる別の行政処分(確定した訂正審決)がなされた場合、上告審において原判決を破棄すべき事由となるか。民訴法338条1項8号の適用ないし準用の可否が問題となる。
規範
特許取消決定の取消請求を棄却した原判決に対し、上告又は上告受理の申立てがなされ、上告審係属中に当該特許に係る明細書の訂正審決が確定し、特許請求の範囲が減縮された場合には、原判決の基礎となった行政処分が後の行政処分により変更されたものと解する。この場合、民訴法338条1項8号に規定する再審事由があるものとして、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある(同法325条2項参照)と解すべきである。
重要事実
上告人(特許権者)は、特許取消決定の取消しを求めて提訴したが、原審は請求を棄却した。上告人が上告受理申立てを行った後、上告審係属中に、特許請求の範囲を減縮することを目的とする訂正審判を請求した。特許庁は当該訂正を認める審決(本件訂正審決)を下し、これが確定した。その結果、本件特許の請求項の一部が訂正・削除され、原判決が審理対象とした特許の範囲が事後的に変更されるに至った。
あてはめ
本件では、上告審係属中に確定した訂正審決により、本件特許の請求項1及び2が訂正され、請求項3が削除されている。これは特許請求の範囲の減縮に当たり、原判決が維持した「特許取消決定」という行政処分の基礎となる事実関係及び権利の範囲が、後の訂正審決という行政処分によって事後的に変更されたことを意味する。このように判決の基礎となった行政処分が変更された事態は、民訴法338条1項8号の再審事由に該当する状況にあるといえる。したがって、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるものと判断される。
結論
原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審(東京高等裁判所)に差し戻す。
実務上の射程
特許紛争において、訴訟係属中(特に上告審)に訂正審決が確定した場合の処理指針を示すものである。行政処分を基礎とする判決において、その基礎が事後的に覆された場合の救済を再審事由に準じて認めた点に意義がある。答案上は、訴訟経済や紛争の一回的解決の観点から、原審での再審理を認める論拠として活用する。
事件番号: 平成10(行ツ)81 / 裁判年月日: 平成11年4月22日 / 結論: 棄却
無効審決取消訴訟の係属中に当該特許権について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には、当該無効審決は取り消されなければならない。
事件番号: 昭和43(行ツ)78 / 裁判年月日: 昭和44年2月13日 / 結論: 棄却
弁理士が、特許庁に在職中審判官として取り扱つた審判事件につき、退職後、弁理士法八条二号に違反して、右事件の審決の取消訴訟を提起した場合には、相手方が右違反行為に異議を述べているかぎり、提訴を無効と解すべきである。
事件番号: 平成19(行ヒ)318 / 裁判年月日: 平成20年7月10日 / 結論: その他
特許異議申立事件の係属中に複数の請求項に係る訂正請求がされた場合,特許異議の申立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正は,訂正の対象となっている請求項ごとに個別にその許否を判断すべきであり,一部の請求項に係る訂正事項が訂正の要件に適合しないことのみを理由として,他の請求項に係る訂正事項を含む…