無効審決取消訴訟の係属中に当該特許権について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には、当該無効審決は取り消されなければならない。
無効審決取消訴訟の係属中に当該特許権について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合における当該無効審決の取消しの要否
特許法123条,特許法126条,特許法178条
判旨
無効審決取消訴訟の係属中に訂正審決が確定して特許請求の範囲が減縮された場合、裁判所は特許庁の専門的判断を経ることなく独自に新たな発明の適否を審理することはできないため、当該無効審決は一律に取り消されるべきである。
問題の所在(論点)
無効審決取消訴訟の係属中に、特許請求の範囲を減縮する訂正審決が確定した場合、裁判所は無効審決を取り消すべきか。裁判所が訂正後の発明について独自に特許性の有無を判断できるか(審決取消訴訟における「特許庁の第一次的判断権」の尊重が問題となる)。
規範
特許を無効にすべき旨の審決の取消訴訟中に、訂正審決の確定により特許請求の範囲が減縮された場合には、当該無効審決を取り消さなければならない。その判断枠組みとして、①明細書の減縮により新たな構成要件が付加された場合、訂正前の発明に対する公知事実との対比だけでは足りず、新たな専門的審理が必要となること、②かかる判断を特許庁の審判手続を経ずに裁判所が第一次的に行うことは許されないこと、③訂正後もなお無効理由がある場合には、別途無効審判により解決されるべきことが示された。
重要事実
特許権者である被上告人の特許に対し、上告人が無効審判を請求し、特許庁はこれを無効とする審決(本件無効審決)を下した。被上告人は審決取消訴訟を提起したが、その訴訟係属中、特許請求の範囲を減縮する内容の訂正審決が確定した。訂正後の内容は、ロール軸交叉装置の配置やロール周速の規定など、新たな構成要件を付加するものであった。
あてはめ
本件では、訂正審決により「ロール軸交叉装置」や「各ロール周速」等の構成要件が付加されており、これは特許請求の範囲の減縮に該当する。この場合、訂正前の発明について対比された公知事実のみならず、他の事実との対比も含めた新たな専門的判断が必要となる。このような判断を、特許庁の審判手続を経ずに裁判所が第一次的に行うことは、審決取消訴訟の構造(特許庁の判断の適否を審理する場であること)に反する。したがって、訂正前の発明を前提とした本件無効審決は、もはや維持できず、取り消されるべきである。
結論
訂正審決により特許の内容が変更された以上、裁判所は特許庁に審理を差し戻すべく無効審決を取り消すべきである。原審の同旨の判断は是認できる。
実務上の射程
訂正審決が確定し「特許請求の範囲の減縮」が行われた場合には、実質的な有効性の判断に踏み込むことなく、形式的に審決取消事由となる。ただし、特許法改正(168条、181条等)による「訂正の再抗弁」や「訂正の申出」制度との関係で、現在の実務ではキャッチアップが必要な点に注意。答案上は、審決取消訴訟における「審理の範囲」と「特許庁の第一次的判断権」を論じる際のリーディングケースとして用いる。
事件番号: 平成17(行ヒ)106 / 裁判年月日: 平成17年10月18日 / 結論: 破棄自判
(省略)