一 実用新案登録に関する訂正審判の係属中に当該実用新案登録を無効にする審決が確定した場合には、訂正審判の請求は不適法となる。 二 実用新案登録に関する訂正審判の請求につき請求が成り立たない旨の審決の取消訴訟の係属中に当該実用新案登録を無効にする審決が確定した場合には、取消訴訟の訴えの利益は失われる。
一 訂正審判の係属中に当該実用新案登録の無効審決が確定した場合における訂正審判の請求の適否 二 訂正審判の請求が成り立たない旨の審決の取消訴訟の係属中に当該実用新案登録の無効審決が確定した場合における訴えの利益の有無
実用新案法37条,実用新案法39条,実用新案法41条,特許法125条,特許法135条,行政事件訴訟法9条
判旨
訂正審判の請求不成立審決に対する取消訴訟の係属中に、当該実用新案登録を無効とする審決が確定した場合、実用新案権は遡及的に消滅し訂正の余地がなくなるため、当該取消訴訟の提起は訴えの利益を失い、不適法となる。
問題の所在(論点)
訂正審判の請求を却下する審決の取消訴訟の係属中に、当該実用新案登録を無効とする審決が確定した場合、当該取消訴訟を維持する「法律上の利益」(行政事件訴訟法9条1項)が認められるか。
規範
実用新案法39条4項但書の趣旨は、無効審決が確定し権利が初めから存在しなかったとみなされる(同法41条、特許法125条)場合に訂正審判の目的が失われることを明文化したものである。したがって、訂正審判の係属中に無効審決が確定した場合も同条項が適用され、訂正審判の請求は不適法となる。この理は、訂正審判の拒絶審決に対する取消訴訟が提起されている場合においても同様であり、訴訟中に無効審決が確定すれば、勝訴判決を得ても訂正が認容される余地がないため、当該訴訟の法律上の利益は失われる。
重要事実
上告人は実用新案権者として明細書の訂正審判を請求したが、請求を成り立たないとする審決(本件審決)を受けた。上告人は本件審決の取消しを求めて提訴したが、その訴訟係属中に、当該実用新案登録を無効とする別の審決が確定した。
あてはめ
本件において、上告人が提起した取消訴訟の係属中に、実用新案法3条違反等を理由として本件実用新案登録を無効にする審決が確定している。特許法125条の準用により実用新案権は初めから存在しなかったものとみなされるため、もはや願書添付の明細書等を訂正する余地はない。したがって、仮に上告人が本件取消訴訟で勝訴し、審決を取り消したとしても、特許庁において訂正審判の請求が認容される可能性は皆無である。それゆえ、上告人は本件審決の取消しを求めるにつき「法律上の利益」を失うに至ったと評価される。
結論
上告人は法律上の利益を失ったため、本件訴えは不適法として却下されるべきである。
実務上の射程
知財行政訴訟における訴えの利益の消滅場面を判示した重要判例。無効審決の確定による遡及的権利消滅の効果が、並行して争われている訂正審判の取消訴訟にも直接影響を及ぼし、一律に訴えを不適法とする。実務上は「紛争の解決に実益がない」状態として、判旨の論理をそのまま援用できる。
事件番号: 昭和57(行ツ)147 / 裁判年月日: 昭和58年3月3日 / 結論: 棄却
実用新案登録の審決取消訴訟において、その基礎となる登録査定が将来訂正審決により変更される可能性があるとしても、上告理由となるものではない。
事件番号: 昭和43(行ツ)78 / 裁判年月日: 昭和44年2月13日 / 結論: 棄却
弁理士が、特許庁に在職中審判官として取り扱つた審判事件につき、退職後、弁理士法八条二号に違反して、右事件の審決の取消訴訟を提起した場合には、相手方が右違反行為に異議を述べているかぎり、提訴を無効と解すべきである。