弁理士が、特許庁に在職中審判官として取り扱つた審判事件につき、退職後、弁理士法八条二号に違反して、右事件の審決の取消訴訟を提起した場合には、相手方が右違反行為に異議を述べているかぎり、提訴を無効と解すべきである。
弁理士法八条二号に違反する提訴の効力
弁理士法8条2号
判旨
弁理士法8条2号(現行31条2号)に違反する訴訟行為は、相手方が遅滞なく異議を述べた場合には、その効力を否定すべきであり、不適法として却下される。
問題の所在(論点)
弁理士法8条(現行31条)の職務制限に違反して行われた訴訟行為(訴えの提起等)の私法上・訴訟法上の効力、およびその無効を主張し得る要件。
規範
弁理士法8条(現行31条)の職務制限規定は、弁理士の品位保持と当事者の保護を目的とする。同条違反の訴訟行為について、相手方は異議を述べ、裁判所に対して行為の排除を求めることができる。もっとも、相手方が違反を知り得たにもかかわらず、異議なく訴訟手続を進行させ、事実審の口頭弁論を終結させたときは、当該訴訟行為は完全に効力を生じ、もはや無効を主張することはできない。逆に、相手方が適時に異議を述べ、終始その効力を争っている場合には、当該訴訟行為は無効となる。
重要事実
上告人から訴訟委任を受けた弁理士Dは、特許庁に審判官として在任中、本件審決取消訴訟の対象である審判事件において主任審判官に指定され、現実に審理に関与していた。しかし、Dは退官後に本件訴訟を提起したため、これが弁理士法8条2号(特許庁在職中に取り扱った事件の職務制限)に抵触するとして問題となった。相手方である被上告人は、一貫してDの違反行為に異議を述べ、訴訟行為の効力を争っていた。
事件番号: 昭和41(行ツ)53 / 裁判年月日: 昭和42年6月9日 / 結論: 棄却
特許法第一五六条第一項で所定の審理終結の通知が審決書作成の日より遅れて発せられたというだけでは、右審決取消の理由とするに足りない。
あてはめ
弁理士Dは、特許庁在職中に本件審判事件の主任審判官として現実に職務を行っていた。したがって、本件訴えの提起は「特許庁ニ在職中取扱ヒタル事件」について業務を行ったものであり、弁理士法8条2号に違反する。本件において、相手方である被上告人は、同弁理士の違反行為に対して直ちに異議を述べ、終始その無効を訴訟手続内で主張している。弁護士法25条違反に関する判例の趣旨を弁理士法に類推適用すると、相手方が異議を述べている以上、瑕疵は治癒されず、本訴提起の効力を肯定することはできない。
結論
弁理士法8条2号に違反して提起された本件訴訟は、相手方が異議を述べているため無効であり、訴えは不適法として却下されるべきである。
実務上の射程
弁護士法25条(職務を行い得ない事件)に関する判例法理を、弁理士法の職務制限規定にも及ぼしたもの。訴訟行為の無効を主張するには、相手方による「適時の異議」が不可欠であり、異議なく手続が進んだ場合には瑕疵が治癒されるという、訴訟手続の安定性を重視する実務上の枠組みを認めた点に意義がある。
事件番号: 昭和57(行ツ)27 / 裁判年月日: 昭和59年4月24日 / 結論: 破棄自判
一 実用新案登録に関する訂正審判の係属中に当該実用新案登録を無効にする審決が確定した場合には、訂正審判の請求は不適法となる。 二 実用新案登録に関する訂正審判の請求につき請求が成り立たない旨の審決の取消訴訟の係属中に当該実用新案登録を無効にする審決が確定した場合には、取消訴訟の訴えの利益は失われる。
事件番号: 昭和45(行ツ)5 / 裁判年月日: 昭和48年6月15日 / 結論: 棄却
登録実用新案の登録無効審判事件の係属中にその登録実用新案につき訂正の審判が請求された場合において、まず訂正審判事件につき審決をした後でなければ登録無効の審決をしてはならないと解すべき法律上の根拠はない。
事件番号: 昭和45(行ツ)32 / 裁判年月日: 昭和51年5月6日 / 結論: 棄却
一、特許の無効審判の係属中に当該特許の訂正審判の審決により無効審判の対象に変更が生じた場合には、従前行われた当事者の無効原因の存否に関する攻撃防禦について修正、補充を必要としないことが明白な格別の事情があるときを除き、審判官は、変更後の審判の対象について当事者双方に弁論の機会を与えなければならない。 二、審決に審判手続…