特許出願の取下げがあった場合には、拒絶査定に対する審判請求を不成立とした審決の取消しを求める訴えの利益は失われる。
特許出願の取下げがあった場合と拒絶査定に対する審判請求を不成立とした審決の取消しを求める訴えの利益
行政事件訴訟法9条,特許法9条,特許法14条,特許法39条5項,特許法52条3項,特許法52条4項,特許法178条1項
判旨
特許出願の拒絶査定不服審判において請求不成立とした審決の取消訴訟の係属中に、原告が当該特許出願を取り下げた場合、審決の取消しを求める法律上の利益は失われ、訴えは不適法となる。
問題の所在(論点)
拒絶査定不服審判の不成立審決に対する取消訴訟において、出願人が対象となる特許出願自体を取り下げた場合、審決の取消しを求める「訴えの利益」が認められるか。
規範
行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益」とは、当該処分を取り消すことによって回復すべき法的利益を指す。訴訟係属中に処分の効力を争う実益が消滅した場合には、訴えの利益が失われ、当該訴えは不適法として却下される。
重要事実
上告人は、特許出願の拒絶査定を不服として審判を請求したが、審判請求を不成立(拒絶維持)とする審決を受けた。上告人はこの審決の取消しを求めて提訴したが、訴訟の係属中である平成元年12月22日に、自ら本件特許出願を取り下げた。
あてはめ
審決取消訴訟の目的は、拒絶査定を維持した審決を取り消すことで、出願審査の状態を回復させることにある。しかし、本件において上告人は自ら特許出願を取り下げている。出願の取下げにより、特許付与の前提となる手続自体が消滅した以上、審決を取り消したとしても特許権の設定に至る余地はなく、審決を取り消す実益は存しない。したがって、上告人は審決の取消しを求める法律上の利益を失ったと評価される。
結論
本件訴えは、訴えの利益を欠くため不適法であり、却下を免れない。
実務上の射程
行政事件訴訟における「訴えの利益」の消滅に関する典型例である。特許法上の拒絶査定不服審判の審決取消訴訟においても、行政事件訴訟法9条の一般原則が適用され、出願の取下げという原告側の行為によって訴えの利益が失われることを確認した。実務上は、訴訟継続の要件を欠くに至った場合の職権調査事項としての処理を導く。なお、特許出願の取下げは遡及的に効力を生じるため、審決の対象自体が消滅するという構成も可能である。
事件番号: 昭和57(行ツ)27 / 裁判年月日: 昭和59年4月24日 / 結論: 破棄自判
一 実用新案登録に関する訂正審判の係属中に当該実用新案登録を無効にする審決が確定した場合には、訂正審判の請求は不適法となる。 二 実用新案登録に関する訂正審判の請求につき請求が成り立たない旨の審決の取消訴訟の係属中に当該実用新案登録を無効にする審決が確定した場合には、取消訴訟の訴えの利益は失われる。
事件番号: 昭和58(行ツ)101 / 裁判年月日: 昭和60年3月28日
【結論(判旨の要点)】補正却下決定に対する不服審判の請求を棄却する審決の後、特許出願が放棄された場合、当該審決の取消しを求める法律上の利益は消滅する。 第1 事案の概要:上告人は特許出願の明細書を補正したが、補正却下決定を受けた。これに対し、補正却下決定不服審判を請求したが、審判請求は成り立たない旨の審決を受けた。上告…
事件番号: 昭和43(行ツ)78 / 裁判年月日: 昭和44年2月13日 / 結論: 棄却
弁理士が、特許庁に在職中審判官として取り扱つた審判事件につき、退職後、弁理士法八条二号に違反して、右事件の審決の取消訴訟を提起した場合には、相手方が右違反行為に異議を述べているかぎり、提訴を無効と解すべきである。