特許出願の明細書の補正却下の決定に対する審判請求を排斥した審決の取消訴訟の係属中に特許出願の放棄がされた場合には、取消訴訟の訴えの利益は失われる。
特許出願の明細書の補正却下の決定に対する審判請求を排斥した審決の取消訴訟の係属中に特許出願の放棄がされた場合における訴えの利益の有無
特許法9条,特許法14条,特許法52条3項,特許法52条4項,特許法53条1項,特許法122条1項,行政事件訴訟法9条
判旨
特許出願の補正却下決定に対する不服審判の審決取消訴訟において、訴訟係属中に特許出願の放棄がなされた場合、当該審決の取消を求める法律上の利益は失われる。
問題の所在(論点)
補正却下決定に対する不服審判の審決取消訴訟において、出願人が特許出願自体を放棄した場合に、当該審決の取消を求める訴えの利益(法律上の利益)が認められるか。
規範
取消訴訟において勝訴判決(審決の取消し)を得たとしても、その前提となる権利関係の消滅等により、行政庁が元の申請や請求を認容する余地がなくなった場合には、当該訴えを維持する「法律上の利益」(行政事件訴訟法9条1項)は失われる。
重要事実
上告人は、特許出願の明細書補正について却下決定を受けたため、不服審判を請求したが、請求不成立の審決を受けた。これに対し審決取消訴訟を提起したが、訴訟係属中に特許庁長官に対し「出願放棄書」を提出して、本件特許出願自体の放棄を行った。
事件番号: 昭和58(行ツ)101 / 裁判年月日: 昭和60年3月28日
【結論(判旨の要点)】補正却下決定に対する不服審判の請求を棄却する審決の後、特許出願が放棄された場合、当該審決の取消しを求める法律上の利益は消滅する。 第1 事案の概要:上告人は特許出願の明細書を補正したが、補正却下決定を受けた。これに対し、補正却下決定不服審判を請求したが、審判請求は成り立たない旨の審決を受けた。上告…
あてはめ
補正却下決定に対する不服審判は特許出願の係属を前提とするものである。出願放棄により特許出願が係属しなくなった以上、審判は審理対象を失う。したがって、仮に審決取消判決を得たとしても、特許庁において補正却下決定に対する不服審判請求を認容する審決を得ることは不可能である。このように、判決による権利救済の実効性が失われた以上、法律上の利益は消滅したといえる。
結論
上告人は法律上の利益を失ったため、本件訴えは不適法として却下されるべきである。
実務上の射程
行政事件訴訟法における「訴えの利益」の消滅場面を判断した事例である。本判決の論理は特許法特有の事情に基づくが、広範には、原処分の前提となる地位や資格を自ら放棄した場合に、関連する不服申立ての訴えの利益が否定されるという一般的な判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 平成2(行ツ)21 / 裁判年月日: 平成3年3月28日 / 結論: 破棄自判
特許出願の取下げがあった場合には、拒絶査定に対する審判請求を不成立とした審決の取消しを求める訴えの利益は失われる。