判旨
補正却下決定に対する不服審判の請求を棄却する審決の後、特許出願が放棄された場合、当該審決の取消しを求める法律上の利益は消滅する。
問題の所在(論点)
補正却下決定に対する不服審判の棄却審決について、その取消訴訟の係属中に特許出願自体を放棄した場合、行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益」を失うか。
規範
補正却下決定に対する不服審判の係属中に特許出願が放棄されると、審判は審理の対象を失う。したがって、当該審決の取消訴訟の係属中に特許出願が放棄された場合、特許出願人は勝訴判決を得たとしても審判請求を認容する審決を得ることができないため、審決取消訴訟における法律上の利益(訴えの利益)を失う。
重要事実
上告人は特許出願の明細書を補正したが、補正却下決定を受けた。これに対し、補正却下決定不服審判を請求したが、審判請求は成り立たない旨の審決を受けた。上告人が当該審決の取消しを求めて提訴したところ、訴訟係属中に上告人は特許庁長官に対し「出願放棄書」を提出し、本件特許出願を放棄した。
あてはめ
本件において、上告人は審決取消訴訟の係属中に特許出願を放棄している。特許出願の放棄により特許出願は特許庁に係属しないこととなり、補正の可否を争う前提を欠くに至る。上告人が本件審決を取り消す旨の勝訴判決を得たとしても、もはや補正却下決定に対する不服審判請求を認容する審決を得ることは不可能である。したがって、上告人が本件審決の取消しを求める必要性は消滅しているといえる。
結論
上告人は本件審決の取消しを求める法律上の利益を失ったものというべきであり、本件訴えは不適法として却下される。
実務上の射程
行政事件訴訟における訴えの利益の存否が争点となる場面で活用できる。処分後に事情が変化し、判決によって処分の効力を取り消したとしても、原告が受けるべき救済(本件では補正の認容)が制度上不可能となった場合には、訴えの利益が消滅するという法理を示す射程を持つ。
事件番号: 平成2(行ツ)21 / 裁判年月日: 平成3年3月28日 / 結論: 破棄自判
特許出願の取下げがあった場合には、拒絶査定に対する審判請求を不成立とした審決の取消しを求める訴えの利益は失われる。
事件番号: 昭和58(行ツ)124 / 裁判年月日: 昭和60年5月28日
【結論(判旨の要点)】行政処分を基礎とする裁判において、その基礎となった処分が後の行政処分により変更された場合は、民事訴訟法上の再審事由(現行338条1項8号)に準ずる事由として、原判決に影響を及ぼす明らかな法令違背があるものと解される。 第1 事案の概要:実用新案登録請求の範囲の記載に基づき、当該実用新案登録を無効と…