外国において発刊頒布された刊行物であつても、わが国の特許庁に到達し同庁資料館に受け入れられた以上は、旧特許法四条二号にいう「国内ニ頒布セラレタル刊行物」と解するのが相当である。
旧特許法第四条二号にいう「国内ニ頒布セラレタル刊行物」の意義。
旧特許法(大正10年法律96号)4条2号
判旨
特許出願前に外国で発刊頒布された刊行物が日本の特許庁資料館に受け入れられた場合、その時点で「国内において頒布された刊行物」に該当し、不特定多数が閲覧可能な状態に置かれたか否かを問わず、新規性を喪失する。
問題の所在(論点)
外国で発行された刊行物が日本の特許庁に到達し、資料館に受け入れられたものの、出願時点において「現実に一般公衆が閲覧可能な状態」に至っていなかった場合であっても、旧特許法4条2号(現行特許法29条1項3号)にいう「国内において頒布された刊行物」に該当するか。
規範
「国内において頒布された刊行物」とは、不特定多数の者が閲覧可能な状態(公知の状態)に置かれることを要するが、刊行物が公的機関である特許庁に到達し、その資料室等の保管場所に受け入れられた時点をもって、客観的に頒布されたものと解するのが相当である。
重要事実
上告人は、昭和28年4月30日に特許出願を行った。しかし、これに先立つ同年4月27日、本件発明と同一内容を記載したフランス国特許明細書が日本の特許庁資料館に受け入れられていた。上告人は、当該明細書が出願当時にまだ一般公衆の閲覧可能な状況にはなかったとして、新規性(旧特許法4条2号)を否定した審決の取り消しを求めた。
あてはめ
本件におけるフランス国特許明細書は、出願の3日前である昭和28年4月27日に日本の特許庁資料館に受け入れられている。特許庁という公的機関に収蔵された事実は、特段の事情がない限り、その時点で社会通念上、不特定多数の者が閲覧し得る状態に置かれたと評価できる。したがって、出願時に現実に閲覧が開始されていたか、あるいは閲覧が物理的に可能であったかという具体的状況を問うまでもなく、同条の「頒布」に該当すると判断される。
結論
本件発明は、出願前に国内において頒布された刊行物に記載されたものといえるため、新規性を欠き、特許を受けることができない。
実務上の射程
現行特許法29条1項3号の「頒布された刊行物」の解釈においても基準となる。刊行物が図書館や特許庁などの公的施設に納入・整理された時点をもって「頒布」があったと解する実務慣行の根拠となる判例であり、現実の閲覧可能性の有無を厳格に問わない点に射程がある。
事件番号: 昭和37(オ)560 / 裁判年月日: 昭和38年10月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当業者が容易に実施できる考案は新規性を欠き、旧実用新案法3条2号に該当するものとして登録を受けることができない。 第1 事案の概要:上告人は自身の考案について実用新案登録を受けていたが、当該登録実用新案について、旧実用新案法3条2号(公然知られたもの等)に該当するか否かが争われた。原審は、当該考案…