特許出願した発明が内外の公開特許公報に掲載されることは、特許法三〇条一項にいう「刊行物に発表」することには該当しない。
発明の公開特許公報への掲載と特許法三〇条一項にいう刊行物への発表
特許法30条1項,特許法65条の2
判旨
特許を受ける権利を有する者が特定の発明を特許出願し、その結果として公開特許公報に掲載されることは、特許法30条1項(当時)にいう「刊行物に発表」したことには該当しない。
問題の所在(論点)
特許出願に伴う公開特許公報(外国公報を含む)への発明の掲載が、特許法30条1項(新規性喪失の例外)の適用要件である「刊行物に発表」したことに該当するか。
規範
特許法30条1項(新規性喪失の例外)にいう「刊行物に発表」するとは、特許を受ける権利を有する者が自ら主体的に刊行物に発表した場合を指す。特許庁による公開公報の刊行は行政庁の手続の一環であり、出願人の主体的発表とは認められない。
重要事実
特許を受ける権利を有する者が、特定の発明について特許出願を行った。その結果として、特許庁長官が特許法上の規定に基づき当該発明を公開特許公報に掲載・刊行した。この公開公報への掲載が、同法30条1項の新規性喪失の例外規定の適用対象となる「刊行物への発表」に該当するか否かが争われた。なお、本件には外国における公開特許公報も含まれていた。
あてはめ
公開特許公報は、出願人が特許出願をしたことを端緒とするものの、特許庁長官が手続の一環として法令の規定に基づき当該発明を掲載・刊行するものである。これは、特許を受ける権利を有する者が、その意思に基づき自ら主体的に刊行物へ発表したものとは評価できない。この理は、国内の公報のみならず、外国の行政庁が発行する公開特許公報であっても同様に妥当すると解される。
結論
公開特許公報への掲載は、特許法30条1項にいう「刊行物に発表」することに該当しない。
実務上の射程
本判決は、出願公開制度に基づく公報発行を「自発的な公表」から除外する趣旨を明確にしたものである。答案作成上は、新規性喪失の例外規定の適用を検討する際、公報による公知化を出願人自身の「発表」として救済することはできないという限界を示す際に用いる。法改正により現在は適用対象が拡大しているが、「主体的発表」の解釈の基礎として重要である。
事件番号: 昭和36(オ)1180 / 裁判年月日: 昭和38年1月29日 / 結論: 棄却
外国において発刊頒布された刊行物であつても、わが国の特許庁に到達し同庁資料館に受け入れられた以上は、旧特許法四条二号にいう「国内ニ頒布セラレタル刊行物」と解するのが相当である。