判旨
行政処分を基礎とする裁判において、その基礎となった処分が後の行政処分により変更された場合は、民事訴訟法上の再審事由(現行338条1項8号)に準ずる事由として、原判決に影響を及ぼす明らかな法令違背があるものと解される。
問題の所在(論点)
行政処分の取消訴訟等の判決後に、その判断の基礎となった行政処分が別の行政処分によって変更された場合、上告審において原判決を法令違背として破棄することができるか(再審事由の準用)。
規範
行政処分を基礎とする裁判において、その処分が後の行政処分によって変更された場合には、民事訴訟法338条1項8号(旧420条1項8号)所定の再審事由が存するものと認め、原判決に影響を及ぼす明らかな法令の違背があるとして、当該判決を破棄すべきである。
重要事実
実用新案登録請求の範囲の記載に基づき、当該実用新案登録を無効とした特許庁の審決を正当とした原審判決の後、特許庁において当該明細書の請求の範囲を訂正することを認める別の審決が確定した。これにより、原審が判断の基礎とした「登録の内容(行政処分)」そのものが事後的に変更された状態となった。
あてはめ
本件では、原審が実用新案登録を無効とした審決を維持する判断を示したが、その後、上告審の段階で実用新案登録請求の範囲を訂正する審決が確定した。この訂正審決は、原判決の基礎となった「無効審決」の前提事実である登録内容を変更するものである。これは、民訴法338条1項8号に規定される「判決の基礎となった行政処分が後の行政処分により変更された場合」に該当する。したがって、原判決には審理を尽くさせるべき明らかな法令違背が存するといえる。
結論
原判決の基礎となった行政処分が変更された以上、原判決には再審事由に準ずる法令違背があるため、原判決を破棄し、事件を原審に差し戻す。
実務上の射程
行政処分の効力や内容が争点となる訴訟(特許訴訟、税務訴訟、行政取消訴訟等)において、上告審継続中に前提となる処分が変更された際の救済根拠として用いる。実務上は、訂正審決等による基礎事実の変動を上告審で反映させるための重要な法理である。
事件番号: 昭和58(行ツ)101 / 裁判年月日: 昭和60年3月28日
【結論(判旨の要点)】補正却下決定に対する不服審判の請求を棄却する審決の後、特許出願が放棄された場合、当該審決の取消しを求める法律上の利益は消滅する。 第1 事案の概要:上告人は特許出願の明細書を補正したが、補正却下決定を受けた。これに対し、補正却下決定不服審判を請求したが、審判請求は成り立たない旨の審決を受けた。上告…
事件番号: 平成14(行ヒ)200 / 裁判年月日: 平成15年10月31日 / 結論: 破棄差戻
特許を取り消すべき旨の決定の取消請求を棄却した原判決に対して上告又は上告受理の申立てがされ,上告審係属中に当該特許について特許請求の範囲を減縮する旨の訂正審決が確定した場合には,原判決には,民訴法325条2項に規定する法令の違反がある。
事件番号: 昭和51(オ)538 / 裁判年月日: 昭和57年3月30日
【結論(判旨の要点)】実用新案登録を無効とすべき旨の審決が確定した場合には、実用新案法41条で準用する特許法125条本文により、当該実用新案権は初めから存在しなかったものとみなされるため、侵害を理由とする損害賠償請求は認められない。 第1 事案の概要:上告人A(実用新案権者)および上告人B(独占的通常実施権者)は、被上…