一、特許の無効審判の係属中に当該特許の訂正審判の審決により無効審判の対象に変更が生じた場合には、従前行われた当事者の無効原因の存否に関する攻撃防禦について修正、補充を必要としないことが明白な格別の事情があるときを除き、審判官は、変更後の審判の対象について当事者双方に弁論の機会を与えなければならない。 二、審決に審判手続上の瑕疵がある場合において、当該瑕疵が審決に影響を及ぼすかどうかの判断が審判手続において審理判断されていない公知事実にかかわるときは、当該瑕疵が一般的に審決に影響を及ぼすべき性質を有するものであるかどうかにより審決取消の原因となる瑕疵かどうかを決すべきである。
一、特許の無効審判の係属中に訂正審判の審決により無効審判の対象に変更が生じた場合と審判官のとるべき措置 二、審判手続上の瑕疵と審決取消の原因
旧特許法(大正10年法律第96号)57条,旧特許法(大正10年法律第96号)84条,旧特許法(大正10年法律第96号)97条,特許法126条,特許法181条
判旨
特許無効審判において訂正により対象が変更された場合、当事者に弁論の機会を与えない手続上の瑕疵は、原則として審決の取消原因となる。審理範囲外の公知事実が関わる場合、当該瑕疵が具体的に審決に影響を及ぼしたかを問わず、一般的に影響を及ぼす性質があれば足りる。
問題の所在(論点)
特許無効審判において、訂正による対象変更後に当事者へ弁論の機会を与えなかった手続上の瑕疵は、具体的な影響の有無を問わず審決の取消原因となるか。特に、審決取消訴訟の審理範囲外の事実が関与する場合の判断基準が問題となる。
規範
1. 特別の事情がない限り、特許の無効審判中に訂正審判の審決により審判対象が変更された場合、審判官は変更後の対象について当事者双方に弁論の機会を与えなければならない。 2. 行政処分の手続上の瑕疵は、原則として処分の結果に影響を及ぼさないことが明らかな特別の事情があるときは取消原因とならない。しかし、審決取消訴訟において、審判で審理されなかった公知事実にかかわる場合、裁判所は具体的な影響を判断できないため、当該瑕疵が「一般的に見て審決の結果に影響を及ぼすべき性質を有する」か否かにより取消原因を決定すべきである。
事件番号: 昭和41(行ツ)53 / 裁判年月日: 昭和42年6月9日 / 結論: 棄却
特許法第一五六条第一項で所定の審理終結の通知が審決書作成の日より遅れて発せられたというだけでは、右審決取消の理由とするに足りない。
重要事実
被上告人らは、本件特許が公知技術から容易に推論できるとして無効審判を請求した。しかし、当該無効審判の係属中に訂正審判の審決が確定し、審判の対象が変更された。特許庁(審判官)は、変更後の審判対象について被上告人に対し改めて主張立証の機会を与えることなく審決を下したため、被上告人が審決の取消しを求めて提訴した。
あてはめ
本件では、無効審判において訂正後の発明について主張立証の機会を与えなかった瑕疵がある。この瑕疵は、当事者の防御権を奪うものであり「一般的に審決に影響を及ぼす性質」を有する。上告人は具体的な影響がないと主張するが、被上告人がどのような公知事実に基づき主張立証したか、それが審決を動かしたかの判断は、審判で審理されていない事実の判断に帰着する。裁判所は審判外の公知事実を審理できない以上、具体的な影響を問うまでもなく、一般的性質をもって取消原因とすべきである。
結論
本件審理手続の瑕疵は、一般的に審決に影響を及ぼす性質を有するものであるから、具体的な判断を待たずして本件審決の取消原因となる。したがって、原審の取消判断は正当である。
実務上の射程
行政処分の手続瑕疵全般に関する「結果影響説」の枠組みを示しつつ、特許審決取消訴訟における「審理範囲の限定」との調整を図った判例である。答案上は、手続的権利の侵害が実質的な判断に及ぼす影響を論じる際、審判前置主義との兼ね合いで「具体的な影響の立証」まで必要か検討する場面で使用する。
事件番号: 昭和45(行ツ)32 / 裁判年月日: 昭和51年5月6日
【結論(判旨の要点)】特許無効審判の請求を退けた審決の取消訴訟において、原告は、審判手続で審理判断されていない新たな無効理由を審決取消事由として主張することは許されない。 第1 事案の概要:特許無効審判において、請求人は特定の引用文献に基づく新規性・進歩性欠如を主張したが、特許庁はこれを認めず審判請求を棄却する審決を下…
事件番号: 昭和45(行ツ)5 / 裁判年月日: 昭和48年6月15日 / 結論: 棄却
登録実用新案の登録無効審判事件の係属中にその登録実用新案につき訂正の審判が請求された場合において、まず訂正審判事件につき審決をした後でなければ登録無効の審決をしてはならないと解すべき法律上の根拠はない。
事件番号: 昭和43(行ツ)78 / 裁判年月日: 昭和44年2月13日 / 結論: 棄却
弁理士が、特許庁に在職中審判官として取り扱つた審判事件につき、退職後、弁理士法八条二号に違反して、右事件の審決の取消訴訟を提起した場合には、相手方が右違反行為に異議を述べているかぎり、提訴を無効と解すべきである。