判旨
特許無効審判の請求を退けた審決の取消訴訟において、原告は、審判手続で審理判断されていない新たな無効理由を審決取消事由として主張することは許されない。
問題の所在(論点)
特許無効審判の請求棄却審決に対する取消訴訟において、審判手続で主張しなかった新たな無効原因(公知事実等)を審決取消事由として主張することができるか。行政訴訟法上の「取消事由の制限」と審判前置主義の趣旨が問題となる。
規範
審決取消訴訟は、審決の適否を判断するものであり、その審理の範囲は、特許無効審判手続において審理・判断された事項に限定される。したがって、審判手続において主張・立証されず、審決の判断対象とならなかった新たな無効理由(先行技術の追加等)を裁判所において主張することは許されない。
重要事実
特許無効審判において、請求人は特定の引用文献に基づく新規性・進歩性欠如を主張したが、特許庁はこれを認めず審判請求を棄却する審決を下した。これに対し、請求人が審決取消訴訟を提起し、審判手続では提出していなかった新たな公知資料に基づき、本件発明には進歩性がない旨の新たな無効理由を主張した。
あてはめ
審判制度は、専門的知見を有する特許庁に一次的な判断を委ねるものである。審判手続において審理判断されていない新たな無効理由を訴訟段階で認めることは、特許庁の判断を経ない事項について裁判所が直接判断することになり、審判制度の趣旨を没却する。本件において原告が主張する新たな無効事由は、審判手続で一切触れられていなかったものであるため、これを審決の違法性を基礎付ける理由として採用することはできない。
結論
審判手続で主張されていない新たな無効原因を、審決取消訴訟において主張することはできない。原告の請求を棄却した原審の判断は正当である。
事件番号: 昭和45(行ツ)32 / 裁判年月日: 昭和51年5月6日 / 結論: 棄却
一、特許の無効審判の係属中に当該特許の訂正審判の審決により無効審判の対象に変更が生じた場合には、従前行われた当事者の無効原因の存否に関する攻撃防禦について修正、補充を必要としないことが明白な格別の事情があるときを除き、審判官は、変更後の審判の対象について当事者双方に弁論の機会を与えなければならない。 二、審決に審判手続…
実務上の射程
特許無効審判の審決取消訴訟における「主張制限」に関するリーディングケースである。審判請求人は、審理の過程で可能な限りの証拠と理由を出し尽くす必要がある。なお、特許権者側が審決維持のために行う「反論」の範囲については本判例の射程外であるが、請求人側による「攻撃」については厳格に制限されるという答案構成が求められる。
事件番号: 昭和39(行ツ)62 / 裁判年月日: 昭和43年4月4日 / 結論: 破棄差戻
特許庁が、実用新案登録無効審判において提出された公知刊行物の記載によつては旧実用新案法(大正一〇年法律第九七号)第一条の考案を構成しないものとすることはできないと判断して、請求が成り立たない旨の審決をした場合であつても、右審決の取消訴訟において、当事者は、審決の判断を受けていない新たな公知刊行物に基づいて当該実用新案を…
事件番号: 昭和41(行ツ)53 / 裁判年月日: 昭和42年6月9日 / 結論: 棄却
特許法第一五六条第一項で所定の審理終結の通知が審決書作成の日より遅れて発せられたというだけでは、右審決取消の理由とするに足りない。