原審認定の事実関係(原判決理由参照)のもとに蔚いて、審決引用の外国刊行物は、本件特許出願前わが国内において頒布され、その記載内容が公知の状態にあつたものというべきである。)(原審東京高裁昭和三五年(行ナ)第四二号昭和四〇・二・二五判決、行政例集一六巻二号二四七(頁登載一九事件参照。)
旧特許法(大正一〇年法律第九六号)四条二号にいう「特許出願前国内二頒布セラレタル刊行物」にあたるとされた事例
旧特許法(大正10年法律第96号)4条
判旨
特許法29条2項の進歩性判断において、本件発明と引用例に相違点が存在する場合であっても、その差異が予測し得ない顕著な効果を奏するものでない限り、当業者が容易に想到し得るものと判断される。
問題の所在(論点)
特許法29条2項(進歩性)の判断において、引用発明との間に構成上の相違が存在する場合に、どの程度の差異があれば「容易に想到」できたとはいえないと判断されるか。
規範
本件発明が引用例との対比において進歩性を有するか否かは、構成上の相違点があったとしても、その差異が当業者にとって予測し得ないような特段の差異(効果の顕著性等)を生じさせるものでない限り、当業者が容易に想到し得るものとして否定される。
重要事実
上告人は特許出願を行ったが、特許庁の審決において、出願前に国内で頒布された刊行物(「メリアンド・テキスタイル・ベリヒテ」1954年5月号)に記載された内容(引用例)に基づき、進歩性が欠如していると判断された。上告人はこれを不服として出願無効の審決の取消しを求めたが、原審も審決を支持したため上告した。
あてはめ
本件発明と引用例を対比すると、個々の要件において多少の相違点は存する。しかし、その相違によって、本件発明が引用例から予測し得ないような格別の効果や差異を生じさせるものとは認められない。したがって、本件発明の構成は引用例から当業者が容易に想到し得る程度のものといえる。
結論
本件発明は当業者が容易に想到し得るものであり、進歩性を欠くとした原審の判断は相当である。したがって、本件上告を棄却する。
実務上の射程
特許法29条2項の進歩性の判断基準を示す基本的事案である。構成の相違があっても、それが予測できない効果を伴わない限りは容易想到性が肯定されるという、いわゆる「顕著な効果」の有無が進歩性判断の重要な要素であることを示唆している。答案上は、引用発明との相違点を指摘した上で、その相違から生じる効果が予測範囲内か否かを論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和40(行ツ)31 / 裁判年月日: 昭和44年7月8日
【結論(判旨の要点)】特許出願にかかる発明が、引用例等の公知技術から当業者が容易に想到し得べきものである場合、進歩性が否定され、特許を受けることができない。 第1 事案の概要:本件発明は、引用例である「メリアンド・テキスタイルベリヒテ」誌に掲載された公知技術に基づき、進歩性の有無が争点となった。特許庁の審決では、本件発…