実用新案登録無効の審決取消訴訟において、審判の手続で審理判断されていた刊行物記載の考案のもり意義を明らかにするため、審判の手続に現れていなかつた資料に基づき当該実用新案登録出願当時における当業者の技術常識を認定することは許される。
実用新案登録無効の審決取消訴訟において審判の手続で審理判断されていた刊行物記載の考案のもつ意義を明らかにするため審判の手続に現れていなかつた資料に基づき当該実用新案登録出願当時における当業者の技術常識を認定することの許否
実用新案法3条,実用新案法37条1項1号,実用新案法47条
判旨
特許等無効審決取消訴訟において、審判で審理された引用例に基づき無効原因の存否を判断する際、審判に現れていなかった資料により技術常識を認定し、引用例の意義を明らかにすることは許される。
問題の所在(論点)
審決取消訴訟において、審判手続で示されていなかった資料に基づき「技術常識」を認定し、審判で示されていた引用例の意義を解釈した上で無効原因の存否を判断することは、審理範囲を逸脱し違法となるか。
規範
審決取消訴訟において、審判手続で審理判断されていない新たな引用例(刊行物)との対比により無効原因の存否を判断することは、審判の先行性を害するため許されない。しかし、審判で審理されていた引用例に基づき判断するにあたり、審判手続に現れていなかった資料を参酌して、出願当時の「当業者の技術常識」を認定し、当該引用例の意義を明らかにすることは、新たな無効原因の認定には当たらず、許容される。
重要事実
実用新案登録の無効を認めた審決に対し、登録権利者が審決取消訴訟を提起した。原審(東京高裁)は、審判手続でも示されていた第三引用例について、審判では提出されていなかった新資料(乙1号証の2)を用いて出願当時の当業者の技術常識を認定した。その上で、当該引用例には本件考案の密封包装技術が開示されていると解釈し、第一ないし第三引用例から本件考案が極めて容易に考案できたとした審決の判断を支持した。これに対し、上告人は審判で判断されていない事実に基づき判断した違法があると主張して上告した。
事件番号: 昭和33(オ)567 / 裁判年月日: 昭和35年12月20日 / 結論: 棄却
一 商標無効審判抗告審判の審決後の事実であつても、商標の無効かどうかの判断の資料になり得るものは、審決に対する訴訟の裁判で判断の資料にならないものではない。 二 商標法による審決に対する訴訟で、当事者は、審判における争点について、審判に際し主張しなかつた新たな事実を主張することができる。 三 旧商標法(大正10年法律第…
あてはめ
審判手続において、本件考案が第一ないし第三引用例から容易に考案できるか否かは既に争点となっていた。原審が用いた新資料は、あくまで第三引用例の内容を正確に理解するための「技術常識」を認定するための補助資料に過ぎない。このように、審判で既に審理されていた引用例の意義を明らかにする目的で技術常識を認定することは、審判で審理されていない新たな引用例を導入することとは本質的に異なる。したがって、原審が新資料により技術常識を認定し、審判の判断を支持したことは、審判の範囲を逸脱したものとはいえない。
結論
本件上告を棄却する。審判に現れていない資料に基づき技術常識を認定し、審判で示された引用例の意義を明らかにした上で無効原因の存否を認定した原審の判断に違法はない。
実務上の射程
知財訴訟における「証拠制限(審理範囲)」の限界を示す重要判例である。答案上は、審決取消訴訟の審理範囲が「審決の適法性」に限定される(審判の先行性)との原則を論じた後、技術常識を補足する新資料の提出については、それが新たな無効理由(新引用例の追加等)にあたらない限り、事実認定の補助手段として許容されるという論理構成で活用する。
事件番号: 昭和39(行ツ)62 / 裁判年月日: 昭和43年4月4日 / 結論: 破棄差戻
特許庁が、実用新案登録無効審判において提出された公知刊行物の記載によつては旧実用新案法(大正一〇年法律第九七号)第一条の考案を構成しないものとすることはできないと判断して、請求が成り立たない旨の審決をした場合であつても、右審決の取消訴訟において、当事者は、審決の判断を受けていない新たな公知刊行物に基づいて当該実用新案を…
事件番号: 昭和45(行ツ)5 / 裁判年月日: 昭和48年6月15日 / 結論: 棄却
登録実用新案の登録無効審判事件の係属中にその登録実用新案につき訂正の審判が請求された場合において、まず訂正審判事件につき審決をした後でなければ登録無効の審決をしてはならないと解すべき法律上の根拠はない。