一 商標無効審判抗告審判の審決後の事実であつても、商標の無効かどうかの判断の資料になり得るものは、審決に対する訴訟の裁判で判断の資料にならないものではない。 二 商標法による審決に対する訴訟で、当事者は、審判における争点について、審判に際し主張しなかつた新たな事実を主張することができる。 三 旧商標法(大正10年法律第九九号)第二条第一項の第九号と第一一号とは排他的に解しなければならないことはない。
一 商標登録無効審判抗告審判の審決後の事実を右審決に対する訴訟の裁判で判断の資料とすることの当否 二 商標法による審決に対する訴訟で審判に際して主張されなかつた新たな事実の主張の当否 三 旧商標法第二条第一項第九号と第一一号との関係
旧商標法(大正10年法律99号)16条,旧商標法(大正10年法律99号)22条,旧商標法(大正10年法律99号)24条,旧商標法(大正10年法律第99号)2条1項本文9号,旧商標法(大正10年法律第99号)2条1項本文11号,旧特許法(大正10年法律96号)128条ノ2,旧特許法(大正10年法律96号)128条ノ5
判旨
商標法に基づく審決取消訴訟において、審決後に生じた事実であっても、登録時の登録無効事由の有無を判断するための資料となり得る。また、審判段階で主張されなかった新事実であっても、審判での争点に関する限り、攻撃防御方法として訴訟段階で主張することが許される。
問題の所在(論点)
1. 審決取消訴訟において、審決後に生じた事実を登録無効事由の判断資料とできるか。2. 審判段階で提出されなかった事実上の主張を、審決取消訴訟において新たに行うことができるか(審決取消訴訟の審理範囲)。
規範
1. 審決取消訴訟において、審決後の事実であっても、登録時における登録無効事由(商標法2条1項9号等)の存否を判断するための資料となり得る。審決後に混同誤認のおそれが認められる場合、特段の事情がない限り、出願登録当時においても当該事由に該当していたものと推定できる。2. 審決取消訴訟は事実審としての性質を有し、審判段階の争点に関する限り、新たな事実上の主張を提出することは禁止されない。
重要事実
上告人(被告)の商標登録に対し、被上告人(原告)が無効審判を請求した。特許庁は無効を認めない審決をしたが、原審はこれを取消した。その際、原審は審決後に発生した証拠(甲19、20号証)に基づき、商標に混同誤認のおそれがあると認定し、登録時にも無効事由があったと推定した。上告人は、審決後の事実を考慮することや、審判で主張されなかった新事実を訴訟で主張することは許されないと主張して上告した。
あてはめ
1. 商標法2条1項9号(当時)の該当性は、実質的には登録時の事情を判断するものであるが、審決後に現れた混同誤認の事実は、過去の登録時における状態を推認させる有力な資料となる。本件証拠により審決後に混同のおそれがある以上、登録当時も同様であったと推定するのが相当である。2. 行政事件訴訟法や独占禁止法のような制限規定がない以上、審判の争点(無効事由の存否)の範囲内であれば、訴訟において新たな証拠や事実を主張することは、攻撃防御方法として許容される。
結論
審決後の事実を判断資料とすること、および訴訟段階での新主張は共に適法である。原審の判断に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
審決取消訴訟における「証拠制限」を否定し、事実上の主張についても審判の争点と同一性を有する限り認める実務を確立した。答案上は、審決取消訴訟の審理範囲について、行政処分の違法性判断基準時(処分時)の原則と、その判断のための資料(証拠)の許容範囲を区別して論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)535 / 裁判年月日: 昭和36年4月25日 / 結論: 棄却
商標登録出願公告に際し指定商品中遺脱されたものがあつても、商標登録で指定商品とされている以上、その遺脱された商品について商標登録は無効ではない。
事件番号: 昭和31(オ)312 / 裁判年月日: 昭和35年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】審決に明白な誤謬がある場合は更正により是正可能であり、それのみを理由に審決を取り消すことはできない。また、指定商品の主成分の略称から成る商標は、自他商品識別力を欠き、商標登録を受けることができない。 第1 事案の概要:上告人は「炭カル」という商標を指定商品「肥料」について登録しようとした。しかし、…
事件番号: 昭和41(行ツ)36 / 裁判年月日: 昭和43年12月13日 / 結論: 棄却
いずれも薬剤等を指定商品とした「リユーマゾロン」なる商標と「ロイマゾン」なる商標とは観念において類似するものと認むべきである。