商標登録の不使用取消審決の取消訴訟における当該登録商標の使用の事実の立証は、事実審の口頭弁論終結時に至るまで許される。
商標登録の不使用取消審決の取消訴訟における当該登録商標の使用の事実の立証
商標法50条
判旨
商標法50条1項に基づく不使用取消審判の審決取消訴訟において、登録商標の使用の事実は、審決時ではなく事実審の口頭弁論終結時に至るまで立証することが許される。
問題の所在(論点)
商標法50条2項の適用がある不使用取消審判の審決取消訴訟において、審判段階で提出されなかった「登録商標の使用の事実」を、訴訟段階(事実審の口頭弁論終結時まで)で新たに立証することが許されるか。
規範
商標法50条2項は、登録商標の使用の事実を取消免脱の要件とし、商標権者に立証責任の一部を分担させて職権調査の負担を軽減させる趣旨の規定である。そのため、審決時までに使用の事実を証明したこと自体が取消免脱の要件となるわけではなく、審決取消訴訟における事実認定の資料は、事実審の口頭弁論終結時まで提出することが可能である。
重要事実
不使用取消審判(商標法50条1項)において、被請求人(商標権者)である被上告人が、登録商標の使用の事実を何ら立証しなかった。特許庁は、使用の事実が証明されないとして商標登録を取り消す審決を下した。これに対し、被上告人が審決取消訴訟を提起し、裁判所の事実審(原審)において初めて使用の事実を立証し、原審がこれを認めて審決を取り消したため、上告人が最高裁に争った。
事件番号: 昭和33(オ)567 / 裁判年月日: 昭和35年12月20日 / 結論: 棄却
一 商標無効審判抗告審判の審決後の事実であつても、商標の無効かどうかの判断の資料になり得るものは、審決に対する訴訟の裁判で判断の資料にならないものではない。 二 商標法による審決に対する訴訟で、当事者は、審判における争点について、審判に際し主張しなかつた新たな事実を主張することができる。 三 旧商標法(大正10年法律第…
あてはめ
商標法50条2項本文は、商標権者に使用の立証を求めているが、これは審決時までの証明を要件化したものではない。本件において、被上告人は審判段階では何ら立証を行っていないが、不使用取消しを免れる実体的な要件である「使用の事実」自体は存在する。したがって、原審(事実審)において当該事実の証拠が提出され、その存在が確認された以上、審決時に立証がなかったことを理由に直ちに取消しを維持すべきではない。事実審の口頭弁論終結時までの立証を認めるべきである。
結論
審決取消訴訟において使用の事実を立証することは許される。したがって、原審での立証に基づき審決を取り消した判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
行政事件訴訟法における「審決取消訴訟の審理範囲」に関連する重要判例である。不使用取消審判においては、審判で主張しなかった証拠を訴訟で提出することが広く認められる(無制限説)。答案上は、50条2項が「審決時までの立証」を要件としていない点に注目し、実体的事実(使用の有無)を重視する論理として活用する。
事件番号: 昭和57(行ツ)147 / 裁判年月日: 昭和58年3月3日 / 結論: 棄却
実用新案登録の審決取消訴訟において、その基礎となる登録査定が将来訂正審決により変更される可能性があるとしても、上告理由となるものではない。