平成五年法律第二六号による改正前の特許法の下において、無効審決取消訴訟の係属中に当該特許権について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には、当該無効審決は取り消されなければならない。
平成五年法律第二六号による改正前の特許法の下において無効審決取消訴訟の係属中に当該特許権について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合における当該無効審決の取消しの要否
特許法(平成5年法律26号による改正前のもの)123条,特許法(平成5年法律26号による改正前のもの)126条,特許法(平成5年法律26号による改正前のもの)178条
判旨
特許無効審決の取消訴訟の係属中に、特許請求の範囲を減縮する訂正審決が確定した場合には、当該無効審決は一律に取り消されるべきである。裁判所が特許庁の審理を経ずに訂正後の発明の有効性を第一次的に判断することは、特許庁の専門的判断を尊重する審決取消訴訟の制度趣旨に反するからである。
問題の所在(論点)
特許無効審決の取消訴訟の係属中に、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合、裁判所は、訂正後の発明についてもなお無効原因があると判断して請求を棄却できるか。それとも、審決を必ず取り消すべきか。
規範
特許無効審決の取消訴訟において、裁判所は特許庁が審理判断しなかった公知事実等に基づき審決の適否を判断することはできない。特許請求の範囲が訂正審決により減縮された場合、新たな要件が付加されており、原則として新たな公知事実との対比等の審理を要する。このような実質的審理を、特許庁の審判手続を経ずに裁判所が第一次的に行うことは許されない。したがって、訴訟中に特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には、特許庁での再審理を期すべく、当該無効審決を取り消さなければならない。
重要事実
上告人(特許権者)は、大径角形鋼管の製造方法に関する特許を有していた。被上告人が無効審判を請求し、特許庁は本件発明が容易想到であるとして無効審決(本件無効審決)を下した。上告人はこの取消しを求めて訴訟を提起したが、その係属中に特許請求の範囲の記載を「一枚板鋼板」から「一枚厚肉鋼板」等に限定する訂正審決が確定した。原審は、訂正後の発明も引用技術から容易想到であり結論に影響しないとして、無効審決を維持したため、上告人が上告した。
あてはめ
本件では、取消訴訟の係属中に「一枚板鋼板」を「一枚厚肉鋼板」に改める等の訂正審決が確定しており、これは特許請求の範囲の減縮に該当する。減縮により発明に新たな要件が付加された以上、特許庁における審判手続を経ていない訂正後の発明の進歩性等の有無を、裁判所が第一次的に審理判断することはできない。たとえ原審が「結論は変わらない」と判断したとしても、それは特許庁の審判権を侵害するものであり認められない。
結論
無効審決の取消訴訟の係属中に、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には、当該無効審決を取り消さなければならない。本件でも無効審決を取り消すべきである。
実務上の射程
訂正審決が確定すると無効審決が「当然に」取り消されるという、いわゆる「キャッチボール現象」を確立した判例である。行政処分(審決)の判断対象自体が遡及的に変更された以上、裁判所は旧発明に対する判断を維持できず、特許庁に差し戻すべきという司法と行政の役割分担を重視している。
事件番号: 平成17(行ヒ)106 / 裁判年月日: 平成17年10月18日 / 結論: 破棄自判
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