特許無効審決後に特許請求の範囲の減縮を認めた訂正審決が確定した場合において、これを理由として無効審決を取り消した判決の拘束力の範囲は、無効審決に訂正前の特許請求の範囲に記載された発明を審判の対象とした誤りがあるとする部分にとどまる。
特許無効審決後に特許請求の範囲の減縮を認めた訂正審決が確定した場合とこれを理由とする無効審決取消判決の拘束力の範囲
特許法123条,特許法126条,特許法181条,行政事件訴訟法33条
判旨
特許無効審判の審決取消判決の拘束力は、判決が審決の違法を判断した範囲に限定される。訴訟中の訂正審決確定により審判対象を誤ったとして審決が取り消された場合、その後の審理において実体的な無効原因の存否に関する裁判所の判断に拘束されるものではない。
問題の所在(論点)
特許請求の範囲の訂正後に審判対象の誤りを理由として審決が取り消された場合、判決中で示された「実体的な無効原因の存否」に関する判断に拘束力が生じるか(行政事件訴訟法33条1項、特許法181条2項)。
規範
行政事件訴訟法33条1項に基づく審決取消判決の拘束力は、取消しの理由となった審決の違法判断(判断枠組みや対象の特定)について生じるが、その範囲は判決が結論を導くために必要とした事由に限定される。審決が審判の対象を誤ったことを理由に取り消された場合、その拘束力は当該対象の誤りに関する部分に止まり、併せて示された実体的な判断には及ばない。
重要事実
特許無効審判の審決取消訴訟の係属中、特許請求の範囲を減縮する訂正審決が確定した。裁判所は、訂正により当初の審決は「審判の対象を誤った違法」があるとしてこれを取り消した。その際、裁判所は傍論的に訂正後の発明につき「無効原因はない」との判断も付記した。その後の差し戻し審判において、特許庁は当該判決の拘束力に従う形で無効原因なしとの審決をしたが、上告人は当該判断に拘束力を認めた原審の判断には法令違反があると主張した。
あてはめ
前訴取消判決の主たる取消理由は、訂正審決の確定により審決が審判対象を誤ったという点にある。そうであれば、拘束力が生じるのは「審決が対象を誤った」という判断部分に限定される。判決が更に踏み込んで述べた「訂正後の発明に無効原因がない」との判断は、取消しの結論に不可欠な理由ではなく、拘束力に従ってなされたものとはいえない。したがって、本件審決が前訴判決に拘束されるとした原審の説示は、拘束力の範囲を誤った違法がある。
結論
取消判決の拘束力は審理対象の誤りにのみ及び、無効原因の有無に関する判断には及ばない。もっとも、本件では原判決が別途実体的に無効原因がないと是認しているため、結論において棄却される。
実務上の射程
特許訴訟における「拘束力」の範囲を画定した重要判例である。答案上は、行訴法33条1項の拘束力が及ぶ「理由」とは何かという文脈で活用する。特に、審議構造が変化した後の実体判断(傍論的判断)については、処分の適法性判断の核心でない限り拘束力を否定する論理として用いるべきである。
事件番号: 平成17(行ヒ)106 / 裁判年月日: 平成17年10月18日 / 結論: 破棄自判
(省略)
事件番号: 平成2(行ツ)181 / 裁判年月日: 平成4年7月17日
【結論(判旨の要点)】行政処分が一部取り消された場合、その取り消された部分に限定して既判力(拘束力)が生じるのであり、処分の他の部分については拘束力は及ばず、その適法性を争うことは妨げられない。 第1 事案の概要:本案の具体的な事実は提供された判決文断片からは不明であるが、行政処分(特許等に関連するものと推察される)の…