特許異議申立事件の係属中に複数の請求項に係る訂正請求がされた場合,特許異議の申立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正は,訂正の対象となっている請求項ごとに個別にその許否を判断すべきであり,一部の請求項に係る訂正事項が訂正の要件に適合しないことのみを理由として,他の請求項に係る訂正事項を含む訂正の全部を認めないとすることは許されない。
特許異議申立事件の係属中に複数の請求項に係る訂正請求がされた場合,特許異議の申立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正は,訂正の対象となっている請求項ごとに個別にその許否を判断すべきか
特許法(平成15年法律第47号による改正前のもの)113条,特許法(平成15年法律第47号による改正前のもの)120条の4第2項,特許法134条の2第1項
判旨
特許異議申立事件において、複数の請求項につき特許請求の範囲の減縮等を目的とする訂正請求がなされた場合、その許否は請求項ごとに個別に判断すべきである。一部の請求項に係る訂正事項に不適合があることのみを理由に、他の請求項に係る訂正を含む請求の全部を認めないことは許されない。
問題の所在(論点)
特許異議申立事件の係属中に複数の請求項に係る訂正請求がなされた場合、その許否を請求項ごとに個別に判断すべきか、あるいは一律に一体不可分として扱うべきか。
規範
特許法上の基本構造として、出願や訂正審判は原則として一体不可分に取り扱われる。しかし、特許異議申立ては各請求項ごとに申し立てることができ、各請求項ごとに取消しの当否が判断される(特許法旧113条)。これに対する防御手段としての訂正請求(同旧120条の4第2項)についても、攻撃防御の均衡の観点から、各請求項ごとに個別に訂正を求めるものと理解すべきであり、その許否も請求項ごとに個別に判断されるのが合理的である。したがって、一の請求項の訂正が要件に適合しない場合であっても、他の請求項に係る訂正が可分である限り、直ちに全部を否定することはできない。
事件番号: 平成14(行ヒ)200 / 裁判年月日: 平成15年10月31日 / 結論: 破棄差戻
特許を取り消すべき旨の決定の取消請求を棄却した原判決に対して上告又は上告受理の申立てがされ,上告審係属中に当該特許について特許請求の範囲を減縮する旨の訂正審決が確定した場合には,原判決には,民訴法325条2項に規定する法令の違反がある。
重要事実
発光ダイオードモジュールに関する本件特許(請求項1〜4)に対し特許異議の申立てがなされた。特許権者である上告人は、請求項1の減縮(訂正事項a)や請求項2の釈明(訂正事項b)等を含む訂正請求を行った。特許庁は、請求項2の訂正事項bが実質的拡張にあたり訂正要件を欠くと判断し、他の訂正事項を検討することなく訂正請求の全体を認めなかった。その上で、訂正前の請求項1について進歩性欠如を理由に取消決定をした。原審も、訂正請求は一体不可分であるとして特許庁の判断を是認したため、上告人が上告した。
あてはめ
本件における訂正事項aは、特許異議の申立てがなされている請求項1に係る訂正であり、他の請求項に係る訂正事項とは可分なものである。本件決定は、請求項2に係る訂正事項bの不適合のみを理由として、請求項1に係る訂正事項aの適否を何ら検討せずに本件訂正の全部を認めなかった。これは、各請求項ごとに攻撃防御の機会を保障すべき特許異議制度の趣旨に反し、訂正請求の許否判断における可分性の法理を誤ったものである。したがって、訂正前の発明に基づいて請求項1に係る特許を取り消した判断には、取り消されるべき瑕疵があるといえる。
結論
特許異議申立手続における訂正請求は、請求項ごとに個別に許否を判断すべきである。原判決のうち、請求項1に係る取消決定を維持した部分は破棄を免れない。
実務上の射程
本判決は特許異議申立手続における訂正請求に関するものであるが、同様の構造を持つ特許無効審判における訂正請求についても、各請求項ごとの可分性が認められる根拠として援用される。答案上は、実用新案に関する一部訂正否定の判例(最判昭55.5.1)との対比に注意しつつ、現行法下の多項制の趣旨や攻撃防御の均衡を理由に、請求項ごとの個別判断を肯定する論拠として用いる。
事件番号: 平成10(行ツ)81 / 裁判年月日: 平成11年4月22日 / 結論: 棄却
無効審決取消訴訟の係属中に当該特許権について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には、当該無効審決は取り消されなければならない。
事件番号: 平成13(行ヒ)154 / 裁判年月日: 平成14年3月25日 / 結論: 破棄差戻
特許権の共有者の1人は,特許異議の申立てに基づき当該特許を取り消すべき旨の決定がされたときは,単独で取消決定の取消訴訟を提起することができる。
事件番号: 昭和40(行ツ)8 / 裁判年月日: 昭和42年11月9日 / 結論: 棄却
特許出願拒絶査定を不服とする審判請求と特許出願を実用新案登録出願に変更する届出とが同時になされた場合においても、特許出願は取り下げたものとみなす旨の実用新案法第八条第四項の規定の適用がある。