特許権の共有者の1人は,特許異議の申立てに基づき当該特許を取り消すべき旨の決定がされたときは,単独で取消決定の取消訴訟を提起することができる。
特許権の共有者の1人が特許異議の申立てに基づく当該特許の取消決定について単独で取消訴訟を提起することの許否
民法252条,民訴法40条,特許法73条,特許法113条,特許法114条,特許法132条,特許法178条
判旨
共有に係る特許の取消決定がされた場合、共有者の1人は、特許権の消滅を防ぐ保存行為として、単独で取消決定の取消訴訟を提起することができる。特許法132条3項は、取消訴訟の場合に共有者全員の共同提起を一般的に強制するものではない。
問題の所在(論点)
共有に係る特許権について特許取消決定がなされた場合、その取消訴訟は固有必要的共同訴訟にあたり、共有者全員で提起しなければならないか。特許法132条3項の適用の有無と、保存行為としての単独提訴の可否が問題となる。
規範
1. 特許権の共有者の1人は、特許の取消決定がなされた際、特許権の消滅を防ぐ「保存行為」として、単独で取消決定の取消訴訟を提起し得る。2. 特許法132条3項は、延長登録拒絶査定不服審判や訂正審判等を想定した規定であり、取消訴訟において共有者全員の共同行動を常に予定しているものではない。3. 複数の共有者が各別に訴えを提起した場合は「類似必要的共同訴訟」として併合審理することで、合一確定の要請を充たし得る。
重要事実
上告人と訴外会社は、本件特許権の共有者であった。特許庁は、第三者による特許異議申立てを受け、本件特許を取り消す旨の決定(取消決定)をした。上告人は、単独でこの取消決定の取消訴訟を提起したが、訴外会社は出訴期間内に提訴しなかった。原審は、本件訴訟が固有必要的共同訴訟に当たると判断し、共有者の一部のみによる提訴は不適法であるとして訴えを却下したため、上告人が上告した。
あてはめ
1. 特許法38条等の出願段階とは異なり、設定登録後の特許権者は各自で発明を実施できる(同法73条2項)。取消決定により特許権が遡及的に消滅することは、共有者の実施権を奪うものである。2. したがって、当該決定の取消しを求めることは権利を維持するための「保存行為」と解されるため、単独提訴が可能である。3. 特132条3項は、存続期間延長の拒絶査定不服審判等、共有者が能動的に権利形成を図る場面を想定したものであり、取消決定への防御的な争訟には及ばない。4. 共同提訴を強制しなくても、類似必要的共同訴訟として処理すれば合一確定は可能であり、手続上の不都合はない。
結論
上告人が単独で提起した本件訴えは適法である。固有必要的共同訴訟であるとして訴えを却下した原判決は破棄されるべきである。
実務上の射程
特許取消決定(現行法では特許無効審判の無効審決に相当する場面)の取消訴訟における原告適格の範囲を画定した。本判決は、拒絶査定不服審判(特121条)の審決取消訴訟には射程が及ばない(そちらは依然として固有必要的共同訴訟とされる)点に注意が必要である。答案上は「保存行為」の概念を用いて、共有者1人による権利救済の必要性を論じる際に活用する。
事件番号: 平成6(行ツ)83 / 裁判年月日: 平成7年3月7日 / 結論: 破棄自判
実用新案登録を受ける権利の共有者が、共同で拒絶査定に対する審判を請求し、請求が成り立たない旨の審決を受けた場合に提起する審決取消訴訟は、固有必要的共同訴訟である。
事件番号: 平成19(行ヒ)318 / 裁判年月日: 平成20年7月10日 / 結論: その他
特許異議申立事件の係属中に複数の請求項に係る訂正請求がされた場合,特許異議の申立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正は,訂正の対象となっている請求項ごとに個別にその許否を判断すべきであり,一部の請求項に係る訂正事項が訂正の要件に適合しないことのみを理由として,他の請求項に係る訂正事項を含む…
事件番号: 平成13(行ヒ)12 / 裁判年月日: 平成14年2月28日
【結論(判旨の要点)】商標権が共有されている場合、各共有者は他の共有者の同意を得ることなく単独で商標登録取消審判(商標法50条1項)を請求することができる。 第1 事案の概要:本件商標の登録名義は、共同審判請求人(被上告人ら)を含む複数名の共有であった。被上告人らは、本件商標が継続して3年以上日本国内で使用されていない…