判旨
商標権が共有されている場合、各共有者は他の共有者の同意を得ることなく単独で商標登録取消審判(商標法50条1項)を請求することができる。
問題の所在(論点)
商標法50条1項に基づく不使用による商標登録取消審判の請求は、共有者全員が共同で行わなければならないか(特許法132条3項、商標法56条1項の適用範囲)。
規範
商標法50条1項に基づく商標登録取消審判の請求は、同法56条1項が準用する特許法132条3項の「共有に係る商標権について審判を請求するとき」には該当せず、共有者の一員から単独で請求することが可能である。同審判は不使用の商標を整理し、他者の商標選択の自由を確保する公益的目的を有するものであり、登録が取り消されても共有者間の権利関係を直ちに害するものではないからである。
重要事実
本件商標の登録名義は、共同審判請求人(被上告人ら)を含む複数名の共有であった。被上告人らは、本件商標が継続して3年以上日本国内で使用されていないとして、商標法50条1項に基づき取消審判を請求した。これに対し上告人側は、特許法132条3項を準用し、共有者全員が共同して請求しなければならない(必要的共同審判)と主張して争った。
あてはめ
特許法132条3項が共有者全員による共同請求を求めている趣旨は、審決によって共有権を直接消滅させるような処分行為について共有者間の意思合致を要求する点にある。しかし、不使用取消審判は商標の死蔵を防ぐ公益的要請に基づくものであり、商標権が共有されている場合にそのうちの一人が取消しを求めたとしても、他の共有者の利益を不当に害するとは限らない。また、特許法132条3項の規定を文言通り適用すると、不使用状態を是正しようとする共有者の権利行使を著しく制限することになり、法の趣旨に反する。
結論
商標法50条1項の審判請求は必要的共同審判ではなく、共有者の一人から単独で提起できる。したがって、被上告人らによる請求は適法である。
実務上の射程
本判決は商標法50条の取消審判に限定された判断であるが、共有商標権に関する権利行使の柔軟性を認めた。実務上、共有者間での意見対立がある場合でも、不使用商標の整理を目的とするならば単独での審判請求が可能であることを明示した重要な判断枠組みである。
事件番号: 平成13(行ヒ)142 / 裁判年月日: 平成14年2月22日 / 結論: 破棄差戻
商標権の共有者の1人は,当該商標登録を無効にすべき旨の審決がされたときは,単独で無効審決の取消訴訟を提起することができる。
事件番号: 平成13(行ヒ)154 / 裁判年月日: 平成14年3月25日 / 結論: 破棄差戻
特許権の共有者の1人は,特許異議の申立てに基づき当該特許を取り消すべき旨の決定がされたときは,単独で取消決定の取消訴訟を提起することができる。
事件番号: 昭和52(行ツ)28 / 裁判年月日: 昭和55年1月18日
【結論(判旨の要点)】実用新案登録を受ける権利の共有者が、共同で請求した拒絶査定不服審判の不成立審決に対し、その取消しを求める訴えは、保存行為に当たらず、共有者全員が原告とならなければならない必要的共同訴訟である。 第1 事案の概要:実用新案登録を受ける権利の共有者らが、共同して拒絶査定不服の審判を請求したが、請求を認…
事件番号: 昭和48(行ツ)82 / 裁判年月日: 昭和50年2月28日
【結論(判旨の要点)】意匠法3条1項3号の「類似」と2項の「創作の容易」は別個の概念であり、前者は需要者の美感に基づく類否を、後者は当業者の立場からみた着想の独創性を問題とする。本願意匠と引用意匠に軽微な差異があっても、全体的観察において美感を共通にする場合は、同条1項3号の「類似」に該当する。 第1 事案の概要:上告…