判旨
意匠法3条1項3号の「類似」と2項の「創作の容易」は別個の概念であり、前者は需要者の美感に基づく類否を、後者は当業者の立場からみた着想の独創性を問題とする。本願意匠と引用意匠に軽微な差異があっても、全体的観察において美感を共通にする場合は、同条1項3号の「類似」に該当する。
問題の所在(論点)
意匠法3条1項3号の「類似」の概念と、同条2項の「創作の容易」の概念は区別されるべきか。また、具体的差異を有する二つの意匠が1項3号の「類似」に該当すると判断される基準は何か。
規範
意匠法3条1項3号の「類似」とは、同一または類似の物品間において、一般需要者の立場からみた美感の類否を判断するものである。これに対し、同条2項の「創作の容易」は、周知のモチーフを基準に、当業者の立場からみた着想の新しさや独創性を判断するものであり、両者は判断の基礎を異にする。したがって、1項3号の類似性を判断する際は、1項各号の意匠を基準に、全体的観察によって美感に差異があるかを検討すべきである。
重要事実
上告人は、ヘルメット等(本願意匠)の意匠登録を出願したが、特許庁は先行する公知の引用意匠と類似するとして拒絶査定とした。原審は、1項3号の「類似」の意味を2項の「創作の容易」と同義に解した上で、本願意匠と引用意匠の差異は軽微であり容易に創作し得ると判断し、請求を棄却した。本願意匠と引用意匠の間には、表面の分割数(8等分か6等分か)、つばの幅の均一性、リボン・結着部・模様の有無、色彩配合(黒と黄か、濃赤と密柑色か)といった具体的差異が存在していた。
あてはめ
原審が1項3号と2項を同義に解した点は誤りであるが、結論は妥当である。本願意匠の裏面は機能上無視され、全体形状もありふれたものである。分割数やつばの幅、リボンの有無等の差異は、全体的観察において看者の目を惹くものではなく、軽微な差異にすぎない。色彩の配合についても、色相に違いはあるものの共に二色の配合であり、本願の配色がありふれたものである以上、顕著な差異とはいえない。以上を総合すると、本願意匠と引用意匠は全体的観察により美感を共通にするため、類似するものと解される。
結論
本願意匠は公知の引用意匠と類似するため、意匠法3条1項3号に基づき登録することができない。原審の判断過程には不備があるが、結論において正当であるため上告を棄却する。
実務上の射程
意匠法3条1項3号と2項が別異の要件であることを明確にしたリーディングケースである。答案上は、類否判断において「創作の容易性」の議論を混同しないよう注意し、あくまで「一般需要者の美感」を基準に全体的観察を行うべきことを論証する際に用いる。また、色彩や細部の差異が「軽微」であり「看者の目を惹かない」場合のあてはめのモデルとしても有用である。
事件番号: 平成3(行ツ)98 / 裁判年月日: 平成5年3月30日
【結論(判旨の要点)】特許法上の新規性等における「発明の同一性」の判断において、出願書類の要旨変更に当たらない範囲内での補正により技術的構成が具体化された場合であっても、それが当業者が当然に採用する程度の周知・慣用技術の付加にすぎず、新たな効果を奏するものでない限り、発明の同一性は失われない。 第1 事案の概要:本件発…
事件番号: 昭和33(オ)817 / 裁判年月日: 昭和35年4月21日 / 結論: 棄却
自己の有する原登録意匠の類似意匠としての登録出願があつた場合において、出願の意匠がその出願前国内に頒布された刊行物に記載された原登録意匠に類似しない第三者の意匠に類似するときは、右出願意匠は、もはや新規性を有するものとはいい得ず、従つて右意匠が原登録意匠に類似するかどうかの判定をまつまでもなく、その登録は許されないもの…
事件番号: 昭和40(行ツ)31 / 裁判年月日: 昭和44年7月8日
【結論(判旨の要点)】特許出願にかかる発明が、引用例等の公知技術から当業者が容易に想到し得べきものである場合、進歩性が否定され、特許を受けることができない。 第1 事案の概要:本件発明は、引用例である「メリアンド・テキスタイルベリヒテ」誌に掲載された公知技術に基づき、進歩性の有無が争点となった。特許庁の審決では、本件発…