登録出願前国内に頒布された刊行物に登載されていた乗合自動車の引用意匠と類似の形状および模様の結合からなる出願意匠の指定商品たる乗合自動車に、あらたに、車体両側の上部から上覆部にかけて、ほぼ四角形で、辺の長さは縦横とも側窓の横幅よりやや短かく、隅に丸味をもたせたにずぎない合計一四個の天窓が取り付けられていても、かかる天窓の考案は、その個々についてはもとより、配列の状態と総合してみても、右出願意匠を現わすべき乗合自動車、ことにそれに含まれる観光用乗合自動車にあつては、なんびとといえども、前示引用意匠に関する刊行物の記載から、特別の考案を要せずして容易に着想実施できるものと認めるのが相当である。
乗合自動車に取り付けられた天窓の考案が意匠登録出願前国内に頒布されていた刊行物の記載から容易に着想実施できるものと認められた事例。
旧意匠法(大正10年法律98号)1条,旧意匠法(大正10年法律98号)3条1項2号
判旨
意匠の類否判断において、公知の意匠と比較して創作的価値が乏しい部分的・軽微な相違点があるとしても、全体として観察した場合に新規性を欠くときは意匠登録を受けることができない。
問題の所在(論点)
旧意匠法3条1項2号(現行法3条1項各号に対応)における意匠の新規性判断において、公知意匠との間に複数の相違点が存在する場合に、それらが容易な着想に基づくものであるときの類否判断の在り方が問題となった。
規範
意匠の新規性判断(旧意匠法3条1項2号)においては、公知の意匠との相違点が、その物品の分野において特別の考案を要せず容易に着想・実施し得る程度のもの(天窓の配置等)や、部分的で軽微な変更(社章や細い線の追加等)に過ぎない場合には、全体として観察して新規性を欠くものと解すべきである。
重要事実
出願意匠は乗合自動車の形状・模様の結合から成る。引用意匠との相違点は、(1)14個の天窓の設置、(2)車体各所への社章(鳩マーク)の表示、(3)車体周囲への二重の細い直線の描画、(4)前輪の複輪化等であった。原審は、天窓の考案が要部に当たるとして新規性を認めたため、上告に至った。
あてはめ
本件各相違点のうち、天窓の考案はその個々の形状や配列状態を総合しても、観光用乗合自動車という物品の性質上、刊行物記載の引用意匠から特別の考案を要さず容易に着想・実施し得るものである。また、社章の配置や細線の描画、前輪の変更も部分的かつ軽微な相違に過ぎない。したがって、たとえ天窓の考案が意匠の要部に属するとしても、全体として観察すれば引用意匠との間に実質的な創作的差異は認められない。
結論
本件各意匠は全体として観察する場合、旧意匠法3条1項2号に該当し、新規性を欠くため、意匠登録を認めることはできない。
実務上の射程
意匠の類否判断において「全体観察」の原則を確認した事例である。要部に変更があっても、それが周知の構成の転用や容易な改変に過ぎない場合には、新規性や創作非容易性が否定されるという論理構成に活用できる。
事件番号: 昭和37(オ)560 / 裁判年月日: 昭和38年10月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当業者が容易に実施できる考案は新規性を欠き、旧実用新案法3条2号に該当するものとして登録を受けることができない。 第1 事案の概要:上告人は自身の考案について実用新案登録を受けていたが、当該登録実用新案について、旧実用新案法3条2号(公然知られたもの等)に該当するか否かが争われた。原審は、当該考案…
事件番号: 昭和33(オ)817 / 裁判年月日: 昭和35年4月21日 / 結論: 棄却
自己の有する原登録意匠の類似意匠としての登録出願があつた場合において、出願の意匠がその出願前国内に頒布された刊行物に記載された原登録意匠に類似しない第三者の意匠に類似するときは、右出願意匠は、もはや新規性を有するものとはいい得ず、従つて右意匠が原登録意匠に類似するかどうかの判定をまつまでもなく、その登録は許されないもの…