商標権の共有者の1人は,当該商標登録を無効にすべき旨の審決がされたときは,単独で無効審決の取消訴訟を提起することができる。
商標権の共有者の1人が当該商標登録の無効審決について単独で取消訴訟を提起することの許否
民法252条,民訴法40条,商標法35条,商標法46条,商標法56条1項,商標法63条,特許法73条,特許法132条
判旨
商標権の共有者の1人は、共有に係る商標登録の無効審決がされたときは、単独で無効審決の取消訴訟を提起することができる。これは、無効審決の取消訴訟が商標権の消滅を防ぐ保存行為としての性質を有し、合一確定の要請も類似必要的共同訴訟として処理することで充たされるからである。
問題の所在(論点)
共有に係る商標権について無効審決が下された場合、その取消訴訟は共有者全員が共同して提起しなければならない固有必要的共同訴訟か、それとも各共有者が単独で提起できるか(保存行為としての可否)。
規範
商標権の共有者の一人による無効審決取消訴訟の提起は、商標権の消滅を防ぐ「保存行為」としての性質を有するため、単独ですることができる。また、当該訴訟は固有必要的共同訴訟ではなく、類似必要的共同訴訟と解される。
重要事実
株式会社Iが登録した商標権につき、上告人へ一部移転され共有となった。その後、被上告人が商標登録無効審判を請求し、特許庁は商標法4条1項19号に基づき無効審決を下した。共有者の一人である上告人は単独で審決取消訴訟を提起したが、原審は当該訴訟が固有必要的共同訴訟であるとして、他の共有者が共同して提起していないことを理由に訴えを却下した。
あてはめ
第1に、登録後の商標権は各共有者が自由に使用でき(商標法35条・特許法73条)、取消訴訟は排他的使用権の遡及的消滅を防ぐ「保存行為」に当たるため、単独提起を認めても他の共有者の利益を害さない。第2に、共有者間に協力が得られない場合に固有必要的共同訴訟と解すると、出訴期間経過により不当に権利が消滅する恐れがある。第3に、単独提起を認めても、認容判決の効力は他者に及び(行訴法32条1項)、棄却された場合も審決が確定するだけであり、合一確定の要請は「類似必要的共同訴訟」として併合審理することで充たされる。
結論
商標権の共有者は、単独で無効審決の取消訴訟を提起することができる。したがって、上告人が単独で提起した本件訴えを不適法とした原審の判断は是認できず、差し戻しを免れない。
実務上の射程
特許権や実用新案権の共有に関する無効審決取消訴訟においても同様の論理が妥当する。答案上は、保存行為としての性質と、手続保障(不当な権利消滅の回避)および合一確定の合理的な調整(類似必要的共同訴訟)という観点から論じる。
事件番号: 平成13(行ヒ)154 / 裁判年月日: 平成14年3月25日 / 結論: 破棄差戻
特許権の共有者の1人は,特許異議の申立てに基づき当該特許を取り消すべき旨の決定がされたときは,単独で取消決定の取消訴訟を提起することができる。
事件番号: 昭和52(行ツ)28 / 裁判年月日: 昭和55年1月18日 / 結論: 棄却
実用新案登録を受ける権利の共有者の、一員が訴を提起してその共有にかかる権利に関する審決の取消を求めることは、右共有にかかる権利についての民法二五二条但書にいう保存行為に該当しない。
事件番号: 平成13(行ヒ)12 / 裁判年月日: 平成14年2月28日
【結論(判旨の要点)】商標権が共有されている場合、各共有者は他の共有者の同意を得ることなく単独で商標登録取消審判(商標法50条1項)を請求することができる。 第1 事案の概要:本件商標の登録名義は、共同審判請求人(被上告人ら)を含む複数名の共有であった。被上告人らは、本件商標が継続して3年以上日本国内で使用されていない…