判旨
商標登録無効審判において、請求人が審判請求後に当初の理由と異なる無効事由を追加主張することは、審判請求の要旨を変更するものとして原則として許されない。
問題の所在(論点)
商標登録無効審判の請求人が、審判請求の際に記載した無効事由とは異なる別の事由を、審判手続の途中で追加的に主張することは「請求の要旨の変更」として禁止されるか。
規範
商標法における無効審判の請求理由の追加主張が許されるか否かは、それが「請求の要旨の変更」に該当するか否かで決せられる。特許法(旧法を含む)の準用規定等に照らし、審判手続の遅延を防止し、審理の範囲を明確にする観点から、当初掲げた無効事由とは別個の独立した事由を後から追加することは、原則として請求の要旨を変更するものとして許容されないと解すべきである。
重要事実
大正11年に設定登録された「セイコー」の文字からなる商標に対し、審判請求人は商標登録無効審判を請求した。請求人は審判手続の過程において、当初の請求理由には含まれていなかった事由(本件商標が周知商標であり、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある等)を、審判請求書の補足説明として新たに追加主張した。
あてはめ
審判請求人は、当初の審判請求書には記載していなかった別の無効事由(周知商標との混同等)を、後の準備書面等によって追加主張している。このような別個の無効事由の導入は、審理の対象を根底から変えるものであり、審判請求の「要旨」そのものを変更するものといえる。したがって、手続の迅速性と公平性の観点から、かかる追加主張は不適法な要旨変更に該当し、審理の対象とすることはできない。
結論
審判請求後の新たな無効事由の追加主張は許されず、特許庁による当該主張の排斥は適法である。上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は旧法下のものであるが、現行の特許法・商標法における「要旨変更」の制限の考え方の基礎となっている。実務上、審判請求書に記載しなかった独立した無効理由を後から追加することは原則として認められないため、請求時に可能な限りの理由を網羅する必要がある。ただし、当初の理由を具体化・明確化する程度の補正は許容される余地がある。
事件番号: 昭和53(行ツ)138 / 裁判年月日: 昭和54年3月30日 / 結論: 棄却
商標法四七条の適用のある商標登録無効審判の審判請求書は、特許法一九条にいう「この法律の規定により特許庁に提出する書類その他の物件であつてその提出の期間が定められているもの」にあたる。
事件番号: 昭和33(オ)567 / 裁判年月日: 昭和35年12月20日 / 結論: 棄却
一 商標無効審判抗告審判の審決後の事実であつても、商標の無効かどうかの判断の資料になり得るものは、審決に対する訴訟の裁判で判断の資料にならないものではない。 二 商標法による審決に対する訴訟で、当事者は、審判における争点について、審判に際し主張しなかつた新たな事実を主張することができる。 三 旧商標法(大正10年法律第…