自ら設置した加入者光ファイバ設備を用いて戸建て住宅向けの通信サービスを加入者に提供している第一種電気通信事業者が,他の電気通信事業者に対して上記設備を接続させて利用させる法令上の義務を負っていた場合において,自ら提供する上記サービスの加入者から利用の対価として徴収するユーザー料金の届出に当たっては,光ファイバ1芯を複数の加入者で共用する安価な方式を用いることを前提としながら,実際の加入者への上記サービスの提供に際しては光ファイバ1芯を1人の加入者で専用する高価な方式を用いる一方で,その方式による上記設備への接続の対価として他の電気通信事業者から取得すべき接続料金については自らのユーザー料金を上回る金額の認可を受けてこれを提示し,自らのユーザー料金が当該接続料金を下回るようになるものとした行為は,次の(1)〜(5)など判示の事情の下においては,独禁法2条5項にいう「他の事業者の事業活動を排除」する行為に該当する。 (1) 当時東日本地区において既存の加入者光ファイバ設備に接続して上記サービスを提供しようとする電気通信事業者にとって,その接続対象は,上記第一種電気通信事業者に事実上限られていた。 (2) 上記サービスは,主として事業の規模によって効率が高まり,かつ,加入者との間でいったん契約を締結すれば競業者への契約変更が生じ難いという特性を有していた。 (3) 上記第一種電気通信事業者は,自らの加入者への上記サービスの提供において安価な方式を用いることを前提としてその接続料金の認可を受けることなどにより,上記第一種電気通信事業者のユーザー料金が接続料金を下回るという逆ざやの発生を防止するために行われていた行政指導を始めとする種々の行政的規制を実質的に免れていた。 (4) 上記第一種電気通信事業者は,上記サービスの市場において他の電気通信事業者よりも先行していた上,その設置した加入者光ファイバ設備を自ら使用するとともに,未使用の光ファイバの所在等に関する情報も事実上独占していた。 (5) 上記サービスの市場が当時急速に拡大しつつある中で,上記第一種電気通信事業者の当該行為の継続期間は1年10か月にわたった。 ※加入者光ファイバ設備:収容局から加入者宅に設置される回線終端装置までを結ぶ光ファイバ並びにこれらと一体として使用される伝送装置及び加入者主配線盤の総称
自ら設置した加入者光ファイバ設備を用いて戸建て住宅向けの通信サービスを加入者に提供している第一種電気通信事業者が,他の電気通信事業者に対して上記設備を接続させて利用させる法令上の義務を負っていた場合において,自ら提供する上記サービスの加入者から利用の対価として徴収するユーザー料金の届出に当たっては,光ファイバ1芯を複数の加入者で共用する安価な方式を用いることを前提としながら,実際の加入者への上記サービスの提供に際しては光ファイバ1芯を1人の加入者で専用する高価な方式を用いる一方で,その方式による上記設備への接続の対価として他の電気通信事業者から取得すべき接続料金については自らのユーザー料金を上回る金額の認可を受けてこれを提示し,自らのユーザー料金が当該接続料金を下回るようになるものとした行為が,独禁法2条5項にいう「他の事業者の事業活動を排除」する行為に該当するとされた事例
(独禁法)私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条5項,電気通信事業法(平成15年法律第125号による改正前のもの)38条,電気通信事業法32条
判旨
排除型私的独占における「排除行為」とは、行為の態様が市場支配力の形成・維持・強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱する人為性を有し、競業者の参入を著しく困難にするなどの効果を持つものをいう。本件のような垂直統合型事業者が、接続市場での独占的地位を利用して「逆ざや」状態を生じさせる行為は、参入を著しく困難にする人為的な排除行為に該当する。
問題の所在(論点)
垂直統合型事業者が、上流(接続設備)の独占的地位を利用して、下流(FTTHサービス)の競業者の参入を阻害する「逆ざや」設定が、独禁法2条5項の「排除」および3条の「私的独占」に該当するか。
規範
「他の事業者の事業活動を排除」(独禁法2条5項)とは、当該行為の単独かつ一方的な取引拒絶ないし廉売としての側面が、自らの市場支配力の形成、維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有し、競業者の市場への参入を著しく困難にするなどの効果を持つものといえるか否かによって決すべきである。具体的には、①競業者の代替供給源確保の難易、②当該サービスの特性、③行為の態様、④市場における地位・競争条件の差異、⑤継続期間等の諸要素を総合考慮して判断する。
重要事実
第一種電気通信事業者である上告人(NTT東日本)は、自らFTTHサービスを提供しつつ、他の事業者に対し光ファイバ設備を接続させる市場で約70%以上のシェアを持つ独占的地位にあった。上告人は、実際には「芯線直結方式」でサービスを提供しながら、形式上は安価なコスト計算が可能な「分岐方式」を装い、競業者が支払うべき接続料金を下回る低いユーザー料金を設定した(いわゆる逆ざや)。この結果、競業者は効率的に事業を営んでも損失が生じる状態となり、当該行為は約1年10か月継続した。
あてはめ
①上告人は接続市場で事実上唯一の供給者であり、②FTTHサービスは先行者が有利な特性を持つ。③行為態様について、実質は芯線直結方式でありながら分岐方式を装うことで、行政指導等の規制を実質的に免れる「人為性」が認められる。また、競業者は上告人の接続料金を支払う限り、ユーザー料金を上告人と同等に設定すれば必ず損失が生じるため、④競争条件に格差が生じ、参入は著しく困難となった。⑤1年10か月という期間は市場の急速な拡大期において相応の有意な長さであり、市場支配力を強化するに足りる。以上より、正常な競争手段を逸脱した排除行為に該当する。
結論
本件行為は、排除型私的独占に該当し、独禁法3条に違反する。FTTHサービス市場自体が「一定の取引分野」として成立しており、上告人の行為により競争の実質的制限が生じたといえる。
実務上の射程
プラットフォームビジネスやインフラを独占する事業者が、下流市場で競業者を圧迫する「プライス・スクイーズ」の判断枠組みを示した重要判例である。行政指導を受けていなかったとしても独禁法上の違法性は阻害されない点も実務上重要である。
事件番号: 平成22(行ヒ)278 / 裁判年月日: 平成24年2月20日 / 結論: 破棄自判
市町村から委託を受けるなどして都市基盤整備事業を行う法人が特定の地域において指名競争入札の方法により発注する一定規模以上の土木工事について入札参加資格を有する複数のゼネコン(広域総合建設業者)がした,【1】上記法人から指名競争入札の参加者として指名を受けた場合には,当該工事若しくは当該工事の施工場所との関連性が強い者又…