公正取引委員会が,郵政省が一般競争入札の方法により発注する郵便番号自動読取区分機類について,被審人ら2社が,おおむね半分ずつを安定的に受注するため,入札執行前に郵政省の調達事務担当官等から情報の提示を受けた者のみが受注予定者として入札に参加することにより受注することができるようにしていたものであって,これは不当な取引制限の禁止の規定に違反する行為であるとし,上記の情報の提示が行われなくなったこと等により上記違反行為が既になくなっているものの,特に必要があると認めて,被審人らに対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前のもの)54条2項の規定により,当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずる審決をした場合において,その審決書には,同項所定の「特に必要があると認めるとき」の要件に該当する旨の判断の基礎となった認定事実が同法57条1項所定の「公正取引委員会の認定した事実」として明確に特定しては示されていないものの,上記の情報の提示がなくとも他の手段をもって上記違反行為をすることが可能であることは明らかであり,そのような見地から審決書の記載を全体としてみれば,(1)被審人らが,上記の情報の提示を主体的に受け入れ,上記違反行為と同様の行為を一般競争入札の導入前から長年にわたり恒常的に行ってきたこと,(2)被審人らが,一般競争入札の導入に反対し,上記の情報の提示の継続を要請したこと,(3)被審人らが違反行為を取りやめたのは,自発的な意思に基づくものではないこと,(4)区分機類の市場は上記審決当時も被審人らを含む3社による寡占状態にあり,一般的にみて違反行為が行われやすい状況にあったこと等の各認定事実を基礎として「特に必要があると認めるとき」の要件に該当する旨判断したものであることを知り得るという事情の下では,審決書には上記判断の基礎となった認定事実が示されているということができ,また,上記認定事実に基づく上記判断が公正取引委員会の裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものということはできず,上記審決は同項及び同法54条2項の規定に違反しない。
郵便番号自動読取区分機類に関する入札談合の事案につき公正取引委員会が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前のもの)54条2項所定の「特に必要があると認めるとき」の要件に該当するとしてした排除確保措置を命ずる審決が同法57条1項及び同法54条2項の規定に違反しないとされた事例
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前のもの)7条2項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前のもの)54条2項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前のもの)57条1項
判旨
独占禁止法54条2項の「特に必要があると認めるとき」の判断には公正取引委員会の専門的裁量が認められ、審決書にその判断の基礎となった事実が全体として示されていれば、明示的な記載がなくても同法57条1項の要件を欠くものではない。
問題の所在(論点)
1. 独禁法54条2項に基づく排除確保措置審決において、審決書に「特に必要があると認めるとき」の具体的認定事実が明記されていない場合、同法57条1項の記載要件に違反するか。 2. 原因となった手段(情報の提示)が消滅した場合でも、なお「特に必要があると認めるとき」との判断は裁量権の範囲内として許容されるか。
規範
1. 独禁法54条2項の「特に必要があると認めるとき」とは、違反行為が既になくなっている場合でも、将来繰り返されるおそれがあるときや、違反行為の結果が残存し競争秩序の回復が不十分である場合等をいう。 2. 審決書の記載要件(独禁法57条1項)との関係では、当該要件に該当する旨の判断の基礎となった認定事実が明確に特定されていなくても、審決書の記載全体から判断して当該事実を当然に知り得る場合には、記載要件を具備する。 3. 「特に必要があると認めるとき」に該当するか否かは、専門的知見を有する公正取引委員会の専門的な裁量に委ねられ、その判断が合理性を欠かない限り、裁量権の範囲内として適法となる。
重要事実
被上告人ら2社は、郵便物自動読取区分機等の市場を二分する複占状態にあり、長年、担当官等からの情報の提示を受けて受注調整(不当な取引制限)を行ってきた。公取委の立入検査後、情報の提示は止まり、被上告人らは違反行為を取りやめたが、公取委は「特に必要がある」と認めて排除確保措置を命ずる審決を行った。これに対し被上告人らは、情報の提示という手段が消滅し再発のおそれがないこと、また審決書に「特に必要がある」ことの具体的根拠事実が明記されていないことを理由に、審決の取消しを求めて提訴した。
あてはめ
1. 審決書の記載について:審決書全体をみると、①長年の恒常的な違反行為、②被上告人らによる情報提示継続の要請、③中止が外部要因(立入検査)によるものであること、④市場の寡占性、⑤被上告人らが違反行為を争っていること等の事実が認定されている。これらは「特に必要がある」旨の判断の基礎として知り得るものであり、記載要件に違反しない。 2. 裁量の合理性について:情報提示は受注調整の一手段にすぎず、他の手段による再発も可能である。これらの事実を基礎とする公取委の判断は合理性を欠くとはいえず、裁量権の範囲内である。
結論
本件審決は独禁法57条1項および54条2項の規定に違反するものではなく、適法である。原審(高裁)の取消判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
行政法における「理由提示の不備」と「裁量権の逸脱濫用」が争点となる事案で参照すべき判例である。特に、明文の理由記載が乏しい場合でも、書面全体の記載から判断の基礎が特定可能であれば適法とされる可能性(理由提示の緩和)と、専門的機関の裁量を広く認める傾向を示すものとして位置づけられる。
事件番号: 昭和50(行ツ)112 / 裁判年月日: 昭和53年4月4日 / 結論: 棄却
一 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和五二年法律第六三号による改正前のもの)の規定に違反する行為の不存在は、同法四八条に基づくいわゆる勧告審決を取り消すべき原因とはならない。 二 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和五二年法律第六三号による改正前のもの)四八条の規定に基づくいわゆる勧告審決…