市町村から委託を受けるなどして都市基盤整備事業を行う法人が特定の地域において指名競争入札の方法により発注する一定規模以上の土木工事について入札参加資格を有する複数のゼネコン(広域総合建設業者)がした,【1】上記法人から指名競争入札の参加者として指名を受けた場合には,当該工事若しくは当該工事の施工場所との関連性が強い者又は当該工事についての受注の希望を表明する者が1名のときはその者を受注予定者とし,複数のときはそれぞれの者の上記関連性等の事情を勘案してこれらの者の話合いにより受注予定者を決め,【2】受注すべき価格は受注予定者が決定し,それ以外の者は受注予定者がその価格で受注できるように協力する旨の合意は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,独禁法(平成14年法律第47号による改正前のもの)2条6項所定の「不当な取引制限」に当たる。 (1) 上記法人は,入札参加資格を有する入札参加希望者の中から指名競争入札の参加者を指名していた上,規模の大きい工事や高度な施工技術が求められる工事については,同法人の付した格付順位の上位の事業者を優先して指名しており,上位に格付けされていた上記ゼネコン及び上記地域で事業活動を行う他のゼネコンを指名することが多かった。 (2) 上記合意をしたゼネコンは,上記合意に基づく個別の受注調整において,上記(1)の他のゼネコンからの協力が一般的に期待でき,入札に参加する地元業者の協力又は競争回避行動も相応に期待できる状況の下にあった。 (3) 実際に発注された上記土木工事のうち相当数の工事において上記合意に基づく個別の受注調整が現に行われ,そのほとんど全ての工事において受注予定者が落札し,その大部分における予定価格に対する落札価格の割合も極めて高いものであった。
都市基盤整備事業を行う法人が特定の地域において指名競争入札の方法により発注する一定規模以上の土木工事について複数のゼネコンがした受注予定者の決定等に関する合意が,独禁法(平成14年法律第47号による改正前のもの)2条6項所定の「不当な取引制限」に当たるとされた事例
(独禁法)私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成14年法律第47号による改正前のもの)2条6項,(独禁法)私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前のもの)7条の2第1項
判旨
1. 独占禁止法2条6項の「競争を実質的に制限する」とは、当該市場の競争機能を損なうことをいい、受注調整の基本ルール等の合意によって、当事者がその意思で落札者や価格をある程度自由に左右できる状態をもたらすことを指す。 2. 課徴金算定の基礎となる「当該商品又は役務」とは、基本合意の対象となった商品等のうち、当該合意に基づく個別の受注調整等の結果、具体的な競争制限効果が発生するに至ったものをいう。
問題の所在(論点)
1. 受注調整の基本的な手順を取り決める「基本合意」が、法2条6項の「競争を実質的に制限する」に該当するか。 2. 複数の個別工事のうち、どの範囲が法7条の2第1項の課徴金算定対象となる「当該役務」に当たるか。
規範
1. 独占禁止法2条6項の「競争を実質的に制限する」とは、市場が有する競争機能を損なうことをいい、入札市場における受注調整の基本的な方法や手順を合意する場合、当該取決めによって、当事者がその意思で落札者や落札価格をある程度自由に左右できる状態をもたらすことをいう。 2. 同法7条の2第1項(現行10条1項)の「当該役務」とは、基本合意の対象とされた工事のうち、当該合意に基づく個別の受注調整等の結果、具体的な競争制限効果が発生するに至ったものをいう。
重要事実
1. 被上告人ら(ゼネコン33社)は、東京都新都市建設公社が発注する下水道等の特定工事につき、受注希望者が1名ならその者を受注予定者とし、複数なら話合いで決定し、他社は協力する旨の合意(本件基本合意)をした。 2. 公社の指名競争入札では、格付上位のゼネコンが指名される可能性が高く、基本合意の当事者以外の業者(地元業者等)も、受注予定者からの依頼や過去の経験から競争を回避する行動をとる状況にあった。 3. 本件対象期間中の特定工事72件のうち、34件でゼネコン各社が落札。その多くで落札率が97%を超える極めて高い数値であった。 4. 各個別工事において、指名を受けたゼネコン間で受注希望の認識・異議なしの確認、入札価格の連絡等の調整が行われた。
あてはめ
1. 本件基本合意は落札予定者や価格をあらかじめ決定し協力する取決めであり、各社の意思決定を事実上拘束し、共同して歩調を合わせる意思の連絡がある。指名業者の選定実務や他業者の協力期待状況から、当事者は落札者・価格をある程度自由に左右し得る状態にあり、現に高い落札率を伴う受注調整が機能していた。したがって「競争を実質的に制限する」にあたる。 2. 本件個別工事は、基本合意に基づく個別の受注調整(工事希望票の提出依頼、価格連絡等)を経て、受注予定者が落札したものである。落札率も約90~99%と高く、具体的な競争制限効果が発生している。よって「当該役務」に含まれる。
結論
本件基本合意は「不当な取引制限」に該当し、本件個別工事はいずれも課徴金の対象となる「当該役務」に当たるため、課徴金納付命令は適法である。
実務上の射程
基本合意(スキーム合意)が存在する場合、その当事者が市場で占める地位や他業者の反応を含めて、価格等を左右し得る「状態」が形成されれば実質的制限が認められる。また、課徴金対象の特定には個別工事ごとの具体的な調整行為と効果(高い落札率等)の有無が重視される。
事件番号: 平成16(行ヒ)208 / 裁判年月日: 平成19年4月19日 / 結論: 破棄差戻
公正取引委員会が,郵政省が一般競争入札の方法により発注する郵便番号自動読取区分機類について,被審人ら2社が,おおむね半分ずつを安定的に受注するため,入札執行前に郵政省の調達事務担当官等から情報の提示を受けた者のみが受注予定者として入札に参加することにより受注することができるようにしていたものであって,これは不当な取引制…