事業者団体がその構成員である事業者の発意に基づき各事業者の従うべき販売価格の引上げ基準額を団体の意思として協議決定し私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律八条一項一号にいう競争の実質的制限をもたらした場合においては、その後行政指導(引上げ幅圧縮)があり各事業者が事実上これに従つたとしても、当該事業者団体が右の決定を明瞭に破棄したと認められるような特段の事情がない限り、右行政指導があつたことにより当然に競争の実質的制限が消滅したものとすることはできない。
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律八条一項一号にいう競争の実質的制限とその後これに関して行われた行政指導との関係
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律8条1項1号
判旨
事業者団体が構成員の従うべき基準価格を決定した場合、その後に行政指導が行われたとしても、当該決定を明瞭に破棄したと認められる特段の事情がない限り、競争の実質的制限は消滅しない。
問題の所在(論点)
事業者団体による価格引上げ決定(独占禁止法8条1項1号)の後、それとは内容の異なる行政指導が行われ、事業者がこれに従った場合であっても、なお「競争の実質的制限」が認められるか。
規範
独占禁止法8条1項1号にいう「競争を実質的に制限すること」とは、事業者団体の行動を通じて事業者間の競争に実質的制限をもたらすこと、すなわち事業者団体の機関決定により所属事業者の価格行動の一致をもたらすことがあれば足りる。事業者団体が構成員の従うべき基準価格を協議決定した以上、その後に主務官庁による行政指導が行われたとしても、当該団体がその決定を明瞭に破棄したと認められるような特段の事情がない限り、右制限の成立は妨げられない。
重要事実
石油連盟(上告人)の営業委員会は、原油価格の上昇に伴い、油種別の販売価格値上げ目標額を決定した(本件決定)。その後、通商産業省は、値上げ幅を一定範囲に抑えるようガイドラインを示す行政指導を行った。構成員である元売業者は事実上この指導に従い、本件決定より低い幅で値上げを行ったが、石油連盟側で本件決定を破棄したり値上げ申入れを撤回させたりする措置はとられていなかった。
あてはめ
本件では、石油連盟が基準価格を決定しており、構成員の価格行動の一致をもたらす状況があったといえる。通商産業省の行政指導は、強制権限に基づかない単なる指導であり、かつ値上げの限度を示すガイドラインにすぎない。元売業者が事実上この指導に従い、本件決定の目標を完全には達成できなかったとしても、その達成した範囲内では本件決定に基づく値上げではないとはいえず、決定の拘束力が消滅したとも認められない。また、石油連盟が本件決定を明瞭に破棄した形跡もないため、依然として競争の実質的制限は維持されていると評価される。
結論
行政指導があったとしても、事業者団体が自ら決定を明瞭に破棄したなどの特段の事情がない限り、競争の実質的制限の成立は認められる。
実務上の射程
事業者団体による自主的な価格カルテルに対し、後から行政が介入して調整を図ったとしても、団体側の意思決定が形式的・実質的に存続している限り、独禁法違反の責任を免れないことを示した。答案上は、行政指導下での行為であっても、団体による「決定」の存在と「破棄」の有無を重視して検討する際に用いる。
事件番号: 昭和57(行ツ)147 / 裁判年月日: 昭和58年3月3日 / 結論: 棄却
実用新案登録の審決取消訴訟において、その基礎となる登録査定が将来訂正審決により変更される可能性があるとしても、上告理由となるものではない。