一 原判決認定のような事実関係のもとでは、原判示の映画劇場賃借は、原判示の取引分野における映画興行上の競争を実質的に制限するものと解すべきである。 二 公正取引委員会が、審判開始決定書記載の事実を訂正しないで、これと多少異る違反事実を認定しても、事実の同一性が害せられず、且被審人の防禦の機会をとざしていない限り、違法ではない。
一 映画劇場の賃借が一定の取引分野における競争を実質的に制限すると認められた一事例 二 公正取引委員会の審判開始決定書記載の事実と審判の範囲
昭和28年法律259号による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律15条1項2号,昭和28年法律259号による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律16条3号,昭和28年法律259号による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律50条1項,昭和28年法律259号による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律54条
判旨
独占禁止法上の「競争を実質的に制限する」とは、市場支配力が形成・維持・強化されることを指し、特定の事業者がその意思で価格や品質等の興行条件を左右できる状態をいう。また、審判手続の範囲は、開始決定記載事実の同一性を害さず防御の機会を奪わない限り、多少の事実の相違は許容される。
問題の所在(論点)
独占禁止法における「競争を実質的に制限する」の意義、および公取委の審判開始決定の記載事実と異なる事実について審決することの適法性が問題となる。
規範
「競争を実質的に制限する」とは、当該取引分野において特定の事業者または事業者団体が、その意思によってある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによって、市場を支配することができる状態をもたらすことをいう。その判断にあたっては、単なる市場占有率の数値のみならず、市場の質的状況や競争者に与える影響を総合的に考慮すべきである。
重要事実
上告人は特定の地域(a地区)の映画館座席数の50.7パーセントを支配するに至った。公正取引委員会は、これにより上告人が当該市場において強度の支配力を持ち、競争を実質的に制限するものと判断した。これに対し上告人は、占有率のみで判断すべきではないこと、および審判手続において対象地域の設定に違法があること等を主張して争った。
あてはめ
上告人は、座席数において過半数を占めるに至っただけでなく、その質においても他を圧倒しており、上告人単独の意思で上映映画や興行条件を左右し得る状態にある。これは市場における強度の支配力を持つ可能性を有するものであり、競争の実質的制限に該当するといえる。手続面については、審判過程で対象地域の範囲が争点となっており防御の機会は保障されていたため、開始決定の記載事実と多少異なる事実に基づき審決を下しても、同一性を害さず適法である。
結論
本件における上告人の行為は、当該取引分野における競争を実質的に制限するものと認められ、また審判手続にも違法はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
東宝・スバル事件として知られ、実質的制限の定義を「市場支配力の形成」と結びつけたリーディングケースである。答案上は、市場占有率という量的指標に加え、参入障壁や競合他社の状況といった質的要素を総合考慮する際の規範として引用する。また、行政法・手続法の文脈では、審判対象の同一性と防御権保障の法理として参照される。
事件番号: 昭和30(オ)261 / 裁判年月日: 昭和36年1月26日 / 結論: 棄却
一 公正取引委員会が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二〇条(昭和二八年法律第二五九号による改正前)により不公正な競争方法であるかどうかを認定するにあたつては、単にその行為の外観にのみとらわれることなく、かかる行為の行われた客観的情勢をも勘案し、その行為の意図とするところをも考慮すべきである。 二 新聞社の…