判旨
仮処分取消の「特別の事情」の有無に関する原審の認定判断について、憲法違反をいう主張が実質的に申請の正当性を強調するにとどまり、認定を否定するに足りない場合、上告は棄却される。原審が疎明ありとした特別の事情の存在を争う主張は、民事上告審判特例法上の重要な主張には当たらない。
問題の所在(論点)
仮処分の取消しを基礎づける「特別の事情」に関する原審の事実認定および判断を、憲法違反や重要な主張の欠如という法的観点から覆すことができるか。
規範
仮処分の取消事由である「特別の事情」(民事保全法等の前身規定)の成否は、事実認定および疎明の有無の問題である。憲法違反を主張する上告であっても、その実質が単なる事案の正当性の強調や事実誤認の主張にとどまる場合は、上告の正当な理由とはならない。また、疎明に基づく特別の事情の認定を争うことは、法律上の重要な主張を欠くものとして棄却を免れない。
重要事実
上告人(仮処分債権者)が申し立てた仮処分申請に対し、原審は「特別の事情」があるとして仮処分の取消しを認めた。これに対し、上告人は憲法違反を主張するとともに、仮処分申請の正当性を強調して、原審が認定した特別の事情の存在を争い、上告を提起した。
あてはめ
上告人の主張は憲法違反を掲げるものの、その実質は本件仮処分申請の正当性を強調し、原審の認定した特別事情を否定しようとする事実に類する主張にすぎない。また、原審が疎明により認めた特別の事情の存否を争う点は、民事上告審判特例法(当時の法規)における「重要な主張」に該当せず、判決の結論に影響を及ぼす法的誤りとは評価されない。
結論
本件上告は棄却される。原審が認めた「特別の事情」に基づく仮処分取消しを覆すべき正当な理由(憲法違反または重要な法律上の主張)は認められない。
実務上の射程
仮処分取消における「特別の事情」は事実認定の性格が強く、上告審でこれを争うには単なる不服申立てではなく、憲法違反や明確な法律上の誤りを示す必要がある。答案上は、特別の事情の認定が事実審の裁量に広く委ねられていることを示す際の傍証として機能する。
事件番号: 昭和25(オ)37 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】仮処分を取り消す旨の第一審判決が言い渡されたとしても、当該仮処分が当然にその効力を失うものではない。 第1 事案の概要:債権者(被上告人)が申し立てた仮処分について、第一審判決により仮処分が取り消された。しかし、その後、当該仮処分の本案訴訟の第二審において債権者が勝訴した事実が、原審(本件仮処分の…